高い犯罪不安のなか,保護者が子どもに対し「子どもだけでの移動」(independent mobility)を制限する実態が見られる。こうした行動規制は,子どもの犯罪被害リスクを低くする点で有用であるものの,一方で,子どもの心身の発達に悪影響を与えることが懸念されている。本研究では,つくば市の一小学校での調査をもとに,保護者による子どもへの行動規制の実態と要因,および子どもの遊びへの影響を実証的に明らかにすることを目的とした。464名の子どもと359名の保護者への質問紙調査から,以下の点が示された。1)保護者による子どもへの行動規制には「日常行動の規制」「商店来訪への規制」「遠方への行動規制」の3つの側面がある,2)強い行動規制は,子どもの各種遊びの経験率,よく遊ぶ仲間,よく遊ぶ場所の数を少なくさせる。これは公園や道路等の公共空間で特に顕著である。3)強い行動規制は,子どもの生活場所に対する保護者の危険認知や,保護者と近隣の大人との交流の強さに規定されている。これらの結果より,子どもの「安全・安心」と「子どもだけでの移動」を両立させるうえでのまちづくりの役割について議論した。