これまでの景観計画の運用に関する研究では、自主条例からの移行に注目した研究が多く、景観法制定をきっかけとした景観計画策定の実態に注目したものは少ない。しかし今日、景観法制定を契機として景観施策を展開した事例も出現しており、景観施策の展開プロセスに関する事例検証の蓄積が必要である。本研究では鹿児島県内での景観施策の展開状況を概観したうえで、特に鹿児島市と薩摩川内市の施策展開について詳しく検証した。本研究では、主に薩摩川内市での取り組みの検証に基づき、景観法に基づく提案制度を支える地域振興施策の基盤の存在、住民主体での運用手法や他の施策・制度との補完関係、制度活用の工夫が、景観施策の地域振興施策への展開を生み出す要因であるとの知見を得た。