抄録
本稿ではオーバーツーリズムの影響を大きく受けた京都市を対象に、廃業および開業宿泊施設の特徴を整理し、立地、施設構成などから類型化を行い、コロナ拡大前後での宿泊施設の変化を明らかにすることを目的とした。調査分析の結果、以下のことが明らかになった。①ホテルのような伝統的宿泊施設タイプの宿泊施設は廃業の割合が低く、一方で開業割合は増大傾向にあった。加えて1施設あたりの平均客室数、客室価格ともに上昇傾向にあり、若干の高価格化と宿泊施設規模の拡大が認められた。②廃業宿泊施設は幅員の狭い道路に立地していたのに対し、開業宿泊施設は9m以上の広幅員の道路に立地する傾向が強まっていることが明らかになった。路地奥に立地していた長屋を含む町家タイプの宿泊施設は滅失しつつあることが明らかになった。以上を踏まえると、これまで京都の都心地域において散見された、事業採算性を追求する宿泊機能に特化したペンシルビルタイプや、路地奥に立地しその存在が不可視なものになっていた簡易宿所に取って代わり、「伝統的宿泊施設タイプ」や高価格帯の「町家一棟貸し型」の宿泊施設が伸長していることが明らかになった。