抄録
空き家の増加は全国的な問題であり、地域の実態を把握し対策に繋げることが重要である。本研究では京都府宇治市を対象に、空き家の数や分布のデータや所有者へのアンケートに基づき、複数の観点の分析から空き家の発生やそれらが管理不全な状況に陥る要因の抽出を行う。地域単位の分析から、高経年化した地域で空き家は発生しやすいが利便性・福祉環境の充実により発生を抑制できる可能性を示した。また、建物単位の分析から、住宅需要や日常の買い物利便性が高いと空き家になりにくいといえる。所有者単位の分析では、長期間にわたり空き家である物件や、居住者・地域が適切に管理できない状態であると管理不全な状態になりやすいことを示した。これらは、自治体の今後の調査の実施や対策立案に役立つ結果である。