抄録
1969年以降、再開発の実施地区が年々増加している一方で、個性あるまちづくりのためには地域文脈の検討が必要であると言われている。しかし、再開発において地域文脈を継承しようとする事例は必ずしも多くない。
本研究では、地域文脈を共有することで表出する地域の個性を「地域性」とし、大津駅西地区の再開発を事例に、再開発事業前後での地域性の継承可能性を高めうるプロセスの在り方について考察する。
その結果、大津駅西地区では、権利者の事業参加機会の確保、区画整理事業との一体的施行や都市再生住宅の建設等のような幅広い権利を保障するための工夫、さらにそれらを受け入れる寛容さを事業主体が備えていたことで、地域性の継承を念頭に置いた事業展開が可能となった。