日本トレーニング指導学会大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2434-3323
Print ISSN : 2433-7773
第7回日本トレーニング指導学会大会
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ポスター発表
陸上競技400m選手を対象とした低酸素環境下でのスプリントトレーニングの効果
*笠井 信一八津谷 陽香後藤 一成
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会議録・要旨集 オープンアクセス

p. 32-

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抄録
背景:近年、低酸素環境下でのスプリントトレーニングの効果が注目されている。我々は、陸 上競技短距離選手を対象に、低酸素環境下でのスプリントトレーニングは無酸素性能力の向上 に有効であることを明らかにしてきたが(Kasai et al. 2017a,b)、大会に向けた実践的な報告 はきわめて少ない。実践報告の目的:陸上競技400m選手を対象に、試合期における低酸素環 境下でのスプリントトレーニングの効果を検証すること。対象者:陸上競技女子400m選手2名 (年齢; 21.0 ± 0.3歳, 身長; 164.3 ± 0.7 cm, 体重; 53.1 ± 4.7 kg, 競技歴; 8 ± 1年 , 400m自己記録; 55.18 ± 0.00秒) 測定環境:低酸素実験室(酸素濃度: 14.5 %, 標高3000m 相当)において、自転車エルゴメータを用いたスプリントトレーニングを1ヶ月間実施した(合 計で6〜7回)。トレーニング期間前後には60秒間スプリントテスト(60秒間ペダリング×2セッ ト, セット間休息10分)を実施し、発揮パワー、血中乳酸濃度、呼気ガス指標などを測定した。 測定手順及び分析方法:ペダリング時における発揮パワーから最高パワーおよび平均パワー を算出した。各セット終了直後、1、3、5分後に指先から穿刺により血液を採取し、血中乳酸 濃度を測定した。また、breath-bybreath 法を用いて運動中の呼気ガス 指標(酸素摂取量, 二酸化炭素排出量 , 換気量, 呼吸交換比)を評価した。 各指標の変化をトレーニング期間前 後で比較した。結果:トレーニング 期間前後に実施した60秒間スプリン トテストにおける発揮パワーは、両 選手ともに向上した(選手A: Set 1, before; 219W, after; 234W, Set 2, before; 231W, after; 241W, 選 手B: Set 1, before; 233W, after; 240W, Set 2, before; 221W, after; 233W)。血中乳酸濃度は、両選手とも にトレーニング期間後に増加した(図 )。 考察:陸上競技400m選手における低酸素環境下でのスプリントトレーニングは無酸素性能力、 特に解糖系によるパワー発揮能力を向上させることが明らかとなった。しかし、コントロール 群を設けていないことから、結果の解釈には注意を要する。【現場への提言】試合期において、 通常のトレーニングに加えた低酸素環境下でのスプリントトレーニングは、無酸素性能力の改 善に効果的であると考えられる。両選手ともに、トレーニング期間後における大会でのスプリ ントタイム(4×400mRのラップタイム)の短縮もみられたことから、低酸素環境下でのスプリン トトレーニングの実施を積極的に推奨することができるだろう。
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