抄録
背景:高校女子ソフトボール競技では、長時間練習が行われており、練習後にウエイトトレー
ニングをすることがある。そのため、ウエイトトレーニングの質が体調によって左右される。
ウエイトトレーニングの負荷設定は、最大挙上重量により決定するパーセンテージ・ベース・
トレーニング(PBT)がよく用いられる。一方、挙上速度を重視する速度・ベース・トレーニン
グ(VBT)が近年注目されている。VBTには速度を基準として重量を設定するため、速度が基準に
達しなくなった時点でセットを終了するために挙上回数がPBTに比べ少なくなる傾向がある。
実践報告の目的:本実践報告では、ウエイトトレーニングにおける負荷設定方法についての基
礎資料を得ることを目的とした。
対象者:研究の説明を口頭で行い紙面にて同意を得た全国大会レベルの高校女子ソフトボール
部選手4名を対象とした。対象のウエイトトレーニング歴は2年以上であった。
測定環境:全ての測定は、対象者が日頃のトレーニングを行なっているトレーニング施設にて
実施した。
測定手順及び分析方法:トレーニングの主目的は年間スケジュールに従い筋肥大とし週1回の
ウエイトトレーニングを2ヶ月間行なった。トレーニング効果を比較するために、加速度計
PUSH2.0を使用したバックスクワットの推定1RMテストをトレーニング開始前と2ヶ月後に実施
した。VBT群はPUSH2.0を使用し挙上速度が0.5m/sとなる重量にて1セット10回以内とし、3セッ
ト実施した。PBT群は、1RMの80%RMの重量で8回3セットを実施した。測定項目は、統計処理は、
2群間の平均値の差を検定には対応のないt検定を用い、有意水準は5%未満とした。
結果:全8セッションの総レップ数は、PBT群(192回±0.00)はVBT群に(145回±1.50)比べ、有
意に多かった(P<0.05)。また、推定1RMの伸び率では、PBT群(0%)はVBT群の(17%)の間に有意に
少なかった(p<0.05)。
考察:PBT群がVBT群より総レップ数が多かったのは、全セッションにて回数を実施できたこと
からトレーニング負荷が不適切であったことが考えられる。また、VBT群の推定1RMの伸び率が
有意に高かったことから、今回実施したVBT群のトレーニング内容でも推定1RMが向上する可能
性が示唆された。
【現場への提言】:本研究におけるVBT群とPBT群の結果から、VBTでは総レップ数をPBTより減ら
すことができ、オーバートレーニングによる傷害のリスクを低減し、かつ質の高いウエイトト
レーニングを実施できる可能性がある。