抄録
背景:スキップは、スプリントドリルの一環として積極的に実施されているが、そのフォーム
や移動速度、実施距離、リズムなどの具体的な方法は定められていない。また、スキップの目
的や効果についても選手やコーチ間で多種多様である。
実践報告の目的:接地毎に左右の脚が交互に接地する歩行や走行と異なり、スキップは、同じ
脚が2歩(回)ずつ交互にホップして進むため、素早い脚の動作が求められると仮定した。本
報告ではスキップ中の特徴を明らかにし、走能力との関連性について着目した。
対象者または対象チーム:陸上競技短距離を専門とし、継続的に専門的なトレーニングをして
いる男子大学生4名(19~21歳,100m自己記録10秒89~11秒09)を対象とした。
測定環境:全天候型400m陸上競技場の走路上に6mの接地位置・時間測定装置(Opto-Jump
Next, Microgate社製)と同距離に光電管式タイミングシステム(Dashr 2.0 Hardware, Dashr
社製)をそれぞれ設置した。全ての選手に“速く進むスキップ”を20mと50mをそれぞれ2回行
うことを口頭で指示した。
測定手順及び分析方法:20mスキップ中の14~20m区間の6m間、および50mスキップ中の44~50m
区間の6m間における移動タイム(秒)、ピッチ(歩/秒)、ストライド(cm/歩)を測定した。ピッ
チとストライドは、左右どちらかの脚が2回連続して接地したものを分析対象とした。
結果:20mスキップの14~20m間(6m)のピッチは5.16歩/秒(±0.346)、そのストライドは1.46m(±
0.659)、タイムは0.922秒(±0.067)であった。50mスキップの44~50m区間(6m)のピッチは
5.93秒(±0.459)、そのストライドは1.67m(±0.828)、タイムは0.78秒(±0.026)であった。
考察:一般的には、スプリントのパフォーマンスは、ピッチとストライドの比率に委ねられる
とされている。また、走行中の移動区間(距離)によっては、ピッチまたはストライドのどち
らかに頼って走行する。今回、選手が実施したスキップでは、スプリントパフォーマンスを問
わず、ピッチまたはストライドに委ねて移動する傾向にあった。そして、移動距離が長くなる
とピッチ、ストライド共に高値になっていた。
【現場への提言】
ヒトの成長期後において、走行中のピッチを改善することは、ストライドの改善に比べて困難
であることが指摘されており、神経系の発達が著しい年代でのピッチを高めるトレーニングの
必要性が報告されている。スキップをはじめ、ピッチを高めるドリルやトレーニングの開発は、
スプリントパフォーマンスの改善の一助となるであろう。