日本トレーニング指導学会大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2434-3323
Print ISSN : 2433-7773
第10回日本トレーニング指導学会大会
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ポスター発表
ジャンプスクワットパフォーマンスに影響を及ぼすエキセントリック局面
*菅野 昌明大久保 幹太水川 真衣堀 優月島 典広仲 立貴
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p. P09-

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抄録

【トレーニング現場へのアイディア】中負荷ジャンプスクワット(JSQ)においても、エ キセントリック局面(ECC)速度が速い方がコンセントリック局面(CON)パフォーマンス を増加させることが明らかになった。また、中負荷JSQ では、ECC フォースもCON パフォ ーマンスに影響を及ぼしている可能性がある。一方で、ECC フォースにはスクワット最大 挙上質量(SQ1RM)が関連していることが示唆された。そのため、これらの知見を体系化 して中負荷JSQ のトレーニングプログラムの作成に活用することが重要である。 【目的】自体重負荷、および20kg の負荷で行う軽負荷JSQ では、ECC のピーク速度と、 CON の跳躍高、平均およびピークの速度とパワーとの間に有意な相関関係が認められてい る。しかし、身体活動動作パフォーマンスの改善には、軽負荷だけではなく中負荷や高負 荷をトレーニングプログラムに加えることが必要であることが先行研究で示されている。 そこで、本研究は中負荷のJSQ のECC の各変数がCON のジャンプパフォーマンスに影響を 及ぼすのかを明らかにすることを目的とした。 【方法】レジスタンストレーニング経験があり、SQ1RM が156.7±39kg の大学ラグビー部 に所属する選手(年齢:20.3±0.9 歳、身長:173.7±7.3cm、体重:86.8±14.7kg)を対 象に、SQ1RM の30%、50%の負荷を用いてECC 速度2 秒(2s)とECC 主観的最速(Max)の2 条件でJSQ を行いCON の跳躍高、いずれも平均とピークの速度、パワー、フォース、およ びピークRate of force development(RFD)をGymAware(Kinetic Performance 社製)を 用いて計測した。ECC 速度2s はメトロノームを使用して行い、Max は主観的最速で実施し た。各条件はランダムに実施し、試技間に2 分間の休息時間を挟んで行った。条件間の比 較には対応のあるt 検定を行い、2 条件間の差の大きさを比較するために効果量(d)を算 出した。各変数間の関連性はピアソンの積率相関係数を算出した。 【結果】ECC ピーク速度、ECC フォースはMax が2s よりも有意に高値を示した。Max は2s と比較してCON の跳躍高、および平均とピークの速度、パワー、フォース、RFD が有意に 高値を示した。また、Max と2s 条件ともにECC フォースとCON の平均およびピークのパワ ー、フォース、RFD との間に有意な相関関係が認められた。さらに、ECC フォースはSQ1RM との間にも有意な相関関係が認められた。 【考察】本研究の結果から、中負荷JSQ においてもECC 速度が速い方がCON パフォーマン スの向上に影響を及ぼした。この結果には、ECC 速度が伸張反射を引き起こし、CON パフ ォーマンスに寄与する筋腱複合体の弾性エネルギーの増加などの要因が貢献していると考 えられる。また、中負荷JSQ ではECC フォースがCON パフォーマンスと、そしてECC フォ ースはSQ1RM と有意な相関関係を示したことから、ECC フォースに対する新たな認識や SQ1RM 増加のためのトレーニングの新たな意義を示唆するものである。

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