抄録
【現場へのアイデア】クラスターセット(CS)によるスクワット(SQ)運動では、1セット当た
りの反復回数を少なくすることによって、高い速度での挙上を維持しながらトレーニングをす
ることが可能になる。よって、速度優位のパワー向上を目的とする場合には、セットレストを
短縮しても少ない反復回数のCS戦略が有効となる。
【目的】CSでの休息再配分法は同一のワークアウト時間内において速度低下を抑制できる可能
性がある。本研究は、CS における休息再配分法の違いがスクワット運動での挙上速度に与え
る影響について検討することを目的とした。
【方法】実験環境:研究機関のトレーニング室(2024年8~11月)実験参加者:運動習慣を有
する健常な男性8名(年齢:20.8±2.0歳、身長:172.3±3.3cm、体重:72.4±11.7kg、 SQ1RM:
123.8±18kg、SQ1RM/BW:1.7±0.1)とした。測定方法:事前に身体組成、SQ 1RMを測定した。
試技は挙上速度を基準に0.65~0.75m/sに対応する重量に統一し、反復回数およびセット数の
異なる6条件(12×2、8×3、6×4、4×6、3×8、2×12)とした。これらの条件は、セット間
の休息合計時間が500秒となるようにセット数によって休息時間を再配分した。試技中はリニ
アポジショントランスデューサーを用いてパラメータを記録し、各セット終了直後に自覚的疲
労度(RPE)を聴取した。これらの試技は、ランダムかつ別日にて行い、試技の間隔は少なく
とも48時間以上とした。統計解析:各条件の速度変化、RPEおよび速度域に対する反復回数の
差については、1要因の分散分析を用い、最初と最終挙上の速度の差については2要因の分散分
析を用いて検討した。
【結果】CS条件の1回目の挙上に対する速度変化は、12×2が6回目以降、8×3が4回目以降、6×4、
4×6が3回目以降、3×8、2×12が2回目以降に有意に低下した。最終挙上の速度を比較すると
12×2、6×4より4×6、3×8、2×12は有意に高く、8×3より3×8、2×12は有意に高い値であ
った。速度域に対する反復回数では、速い速度域では、12×2、8×3、6×4より3×8、2×12が
有意に多く、中程度の速度域では12×2、8×3、6×4より2×12が有意に少なく、遅い速度域では、
12×2、3×8より3×8、2×12が有意に少なかった。RPEの比較では、1セットに対して、12×2、
8×3は2セット目以降、6×4、4×6では3セット目以降、3×8では4セット目以降、2×12では6
セット目以降に有意に上昇した。RPEは、最終セット後において条件間の差は無く、1セット目
終了では12×2は6×4、4×6、3×8、2×12より有意に高く、8×3、6×4は3×8、2×12より有
意に高い値を示した。
【考察】CS条件における4×6、3×8および2×12は1レップ目に対する最終レップ速度低下率が
小さくなることが考えられる。また、高速度域の反復回数では少ない反復回数のCS条において
多く挙上していることが明らかになった。このことからセットレストを短縮しても速度低下の
影響は少なくなると考えられる。