【はじめに】歩行自立の阻害因子である重度片麻痺,脳卒中後うつ病,中枢性脳卒中後疼痛,失語症の合併に加え,非麻痺側の変形性膝関節症と肥満を呈した脳卒中片麻痺患者1症例に対する長下肢装具(Knee-Ankle-Foot-Orthosis:以下,KAFO)を使用した装具療法の有用性について検討すること。
【症例紹介】左中大脳動脈閉塞症を発症した50歳代後半の女性。
【経過】回復期リハビリテーション病棟でKAFOを使用した立位と歩行練習を主体に実施した。介入は失語症のため簡単な課題を選択し,脳卒中後うつ病と肥満,変形性膝関節症による疼痛を考慮して心理的負担や疲労感,疼痛の状況を確認しながら通常よりも高頻度で休息を取り入れた。中枢性脳卒中後疼痛に対しては事前に触れる部位を知らせて愛護的に介助した。これらの配慮により機能改善が生じ歩行と日常生活活動の介助量軽減に至った。
【考察・まとめ】合併症などに配慮しながらKAFOを使用した装具療法は歩行と日常生活活動の改善に寄与する可能性が示された。