総合理学療法学
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研究論文
  • 松田 涼, 世古 俊明, 隈元 庸夫, 佐藤 佑太郎, 濱本 龍哉, 吉田 英樹
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 4 巻 p. 1-9
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/30
    [早期公開] 公開日: 2023/08/18
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】脳卒中者の等尺性脚伸展筋力(以下,脚伸展筋力)と等尺性膝伸展筋力(以下,膝伸展筋力)と歩行自立度との関連を検討し,重度の麻痺を呈する脳卒中者への下肢筋力評価の一助を得ること。

    【方法】対象は脚伸展筋力と膝伸展筋力測定が可能な初発の脳卒中者51名とした。筋力測定には牽引式徒手筋力計を使用し,脚伸展筋力測定は背もたれ付きの椅子に深く腰掛けた座位とし,測定下肢を前方に置いた椅子の座面に挙上させ,膝関節屈曲30度位にて施行した。なお,膝伸展筋力測定はベルト固定法にて実施した。歩行自立度評価にはFunctional Ambulation Category(以下,FAC)を用いた。脚伸展筋力と膝伸展筋力の関連および麻痺の重症度を制御変数としたFACと各筋力値の偏相関分析を実施した。

    【結果】脚伸展筋力と膝伸展筋力は高い正の相関を認め,偏相関分析にて麻痺側脚伸展筋力および膝伸展筋力がFACと中等度の正の相関を認めた。

    【結論】脳卒中者の脚伸展筋力は膝伸展筋力と同程度に歩行自立度を反映することが明らかとなった。

  • 松本 忠義, 加藤 良一
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 4 巻 p. 11-19
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/30
    [早期公開] 公開日: 2023/08/18
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】救命救急センターに入室し,理学療法介入を行った高齢患者におけるフレイルの有症率とフレイルを有する高齢患者の離床および転帰状況について後方視的に調査すること。

    【方法】対象は2016年4月–2019年1月に当院救命救急センターへ入室し,理学療法介入を行った65歳以上の患者とし,施設入所者および死亡した患者を除外した。その後,Clinical Frailty Scale(以下,CFS)を用いてフレイル群(CFS ≥ 5)とノンフレイル群(CFS < 5)の2群に分類し,臨床的特徴について比較検討した。

    【結果】フレイル群は36名(23%),ノンフレイル群は123名であった。フレイル群はノンフレイル群と比較し,年齢と人工呼吸器装着率が有意に高く,入院中に歩行開始できた割合や退院時ICU Mobility Scale,自宅退院率が有意に低かった。しかし,性別と年齢を調整した結果では,自宅退院率に有意な関連は認められなかった。

    【結論】入院前よりフレイルを呈する高齢患者は,入院中に歩行練習が開始できず,退院時に移動能力が低下している可能性が示唆されたが,転帰との関連はなかった。

  • ―理学療法開始後3カ月までの検討―
    池田 尚也, 長野 大輔
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 4 巻 p. 21-27
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/30
    [早期公開] 公開日: 2023/09/29
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】肩腱板断裂保存療法患者の夜間痛改善に影響を与える因子について検討した。

    【方法】腱板断裂に対し保存療法を実施した50例とした。初診時の患者情報,単純X線所見,理学療法開始時と開始後3カ月の肩関節可動域を調査した。従属変数を理学療法開始後3カ月の夜間痛の有無,共変量を年齢,性別,罹病期間,断裂サイズ,肩峰下滑液包の炎症の有無,独立変数を単純X線所見,理学療法開始時と開始後3カ月の肩関節可動域とし,多重ロジスティック回帰分析を用いて夜間痛改善に関連する因子を検討した。

    【結果】夜間痛改善に関連する因子として理学療法開始後3カ月の肩関節下垂位外旋可動域が選択された。

    【結論】腱板断裂保存療法患者の理学療法開始後3カ月の夜間痛改善と肩関節下垂位外旋可動域の関連が示唆された。

  • 上田 雄太, 北口 拓也, 田上 光男
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 4 巻 p. 29-34
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/30
    [早期公開] 公開日: 2023/09/29
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】整形外科術後患者を対象に復職状況ならびに復職時の問題点を調査した。

    【方法】整形外科術後の就労患者105名を対象に,術後6ヶ月時の郵送アンケートにて,患者属性及び復職状況,復職時期,復職に関する身体的問題点(復職時に有した症状または仕事上困難な動作の有無,非復職原因)を調査した。

    【結果】アンケート回収率は63%であった。復職率は89%で,復職者の63%が復職時に症状または仕事上困難な動作を有していた。症状では痛み(復職者の内17%),仕事上困難な動作ではしゃがみ込みが最も多かった(復職者の内15%)。非復職者における復帰しない理由として7名中5名が身体的要因と回答した。

    【結論】復職率は89%と高かったが,内63%が復職時に身体的な問題を有していた。また,非復職者の内,半数以上が身体的要因で復帰を断念しており,今後,復職を目的とした効率的な運動療法及び指導について検討する必要があると考えられた。

  • スコーピングレビュー
    浦 慎太朗, 甲斐 太陽, 北川 孝
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 4 巻 p. 35-46
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/30
    [早期公開] 公開日: 2024/01/24
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    【目的】長下肢装具(Knee-Ankle-Foot Orthosis:以下,KAFO)の有効性は,脳卒中治療ガイドライン2021や理学療法ガイドライン第2版,既存の臨床研究では十分に明らかにされていない。今回,脳卒中患者に対するKAFOの臨床使用におけるスコーピングレビューを実施した。

    【方法】データベースは6つ使用し,2022年3月までの研究報告を検索対象とした。脳卒中を対象とした,KAFOの記述があるものを対象とした。無作為化比較試験,非無作為化比較試験などの介入研究や,コホート研究,横断的研究を含む観察研究も含めるよう検討した。

    【結果】KAFOを使用した対象者は873名,対象論文は20本であった。使用時期として前期亜急性期の報告が多く,運動麻痺が重度,中等度に対して使用している報告が多かった。前向きコホート研究やランダム化比較試験の報告はなかったが,KAFOの有効性を示した報告は5本あった。

    【結論】現時点では,どのような病期や麻痺の重症度に,どの程度KAFOを使用するべきかは不明確という結果となった。

  • 井上 大輔, 畑中 將希, 宇多 恵一郎, 惠飛須 俊彦, 馬谷 直樹
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 4 巻 p. 47-53
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/30
    [早期公開] 公開日: 2024/02/15
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】本研究では,上方関節唇損傷(以下,SLAP損傷)を合併した非外傷性腱板断裂患者の肩関節機能の特徴を検討することを目的とした。

    【方法】対象は,鏡視下腱板修復術を施行した非外傷性腱板断裂患者55名とし,SLAP損傷合併群とSLAP損傷非合併群の2群に分けた。患者特性ならびに術前の肩関節機能として,痛み,肩関節可動域,日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準,Shoulder36を後方視的に調査し,両群間にて比較した。

    【結果】SLAP損傷合併群31肩,SLAP損傷非合併群24肩であった。対象者におけるSLAP損傷の合併率は56%であった。SLAP損傷合併群では,上腕二頭筋長頭腱の扁平化を呈した割合が高く,他動屈曲角度と他動90度外転位外旋角度が有意に高値であった。その他の肩関節機能は両群間で有意な差は認められなかった。

    【結論】SLAP損傷を合併した非外傷性腱板断裂患者では,他動屈曲角度と他動90度外転位外旋角度が高値であるという特徴が示され,これらには上腕二頭筋長頭腱の変性が関連している可能性が示唆された。

  • 徳田 和宏, 海瀬 一也, 竹林 崇, 小山 隆, 藤田 敏晃
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 4 巻 p. 55-61
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/30
    [早期公開] 公開日: 2024/02/29
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】上肢集中練習(Constraint-Induced movement therapy:以下,CI療法)を実施した例を対象に,転帰先決定における上肢機能の目安を推測すること。

    【方法】対象はCI療法を実施した自宅退院群20例,回復期転院群44例。これらの基礎的情報およびFugl Mayer Assessment上肢運動項目(以下,FMA上肢運動項目)とFunctional independence measure(以下,FIM)をリハビリテーション開始時,上肢集中練習開始時,退院時で調査した。

    【結果】開始時FMA上肢運動項目カットオフ値は47.0点であった。FMA上肢運動項目およびFIMの経過について分散分析からは2群とも有意差を認め,転帰とFIMに交互作用があった。目的変数を開始時FMA上肢運動項目においた重回帰分析では,転帰,開始時FIMとも有意差を認め交互作用も寄与した。

    【結論】自宅退院における上肢機能の目安として,開始時FMA上肢運動項目47点が抽出された。ただし転帰先の決定にはADL経過も含め検討していく必要がある。

  • ―入院時の評価を用いた予測―
    池田 尚也, 山下 智徳, 石井 咲良
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 4 巻 p. 63-70
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/30
    [早期公開] 公開日: 2024/05/17
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】本研究の目的は地域包括ケア病棟に入院した大腿骨近位部骨折術後患者の退院時における歩行自立可否に影響する要因を明らかにすることである。

    【方法】地域包括ケア病棟退院時の歩行自立可否に影響する要因の検討として,目的変数を退院時の歩行自立可否,説明変数を入院時に得られた患者背景情報と評価結果とし,多重ロジスティック回帰分析を用いて検討を行った。歩行自立可否の判別におけるカットオフ値は受信者動作特性曲線を用いて算出した。

    【結果】地域包括ケア病棟退院時の歩行自立可否に影響する要因として,入院時のMini Mental State Examination(以下,MMSE)とFunctional Independence Measure(以下,FIM)運動得点が抽出された。退院時の歩行自立可否の判別におけるカットオフ値はMMSEが21.5点,FIM運動得点が49.5点であった。

    【結論】入院時のMMSEとFIM運動得点が地域包括ケア病棟退院時の歩行自立可否の判別に有用となる可能性が示唆された。

  • ―スコーピングレビュー―
    吉田 麗玖, 伊佐次 優一, 北川 孝
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 4 巻 p. 71-79
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    【目的】 体外衝撃波は肩関節痛に有効だが,種類により効果が異なる可能性がある。本研究は,肩関節痛患者における拡散型圧力波が疼痛,関節可動域に対する効果を包括的に提供することとした。

    【方法】 2023年6月にPubMed,The Cochrane Central Register of Controlled Trials,Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature,Google Scholarにおいてextracorporeal shockwave therapy,Shoulder Painのキーワードで検索した。

    【結果】 23件の報告が含まれ,23件中19件は肩関節における疼痛を軽減,13件中12件は関節可動域を増加させたと報告した。

    【結論】 拡散型圧力波は肩関節痛患者の疼痛,関節可動域を改善させる非侵襲的なツールであると示唆された。

症例報告
  • 木本 祐太, 杉谷 竜司, 田端 洋貴, 坂井 寛充, 白石 匡, 木村 保, 東本 有司, 田平 一行
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 4 巻 p. 81-87
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/30
    [早期公開] 公開日: 2023/08/18
    ジャーナル オープンアクセス

    【はじめに】Venovenous extracorporeal membrane oxygenation(以下,VV-ECMO)を装着した重症レジオネラ肺炎患者に対して腹臥位療法を行った。酸素化の改善により,VV-ECMOを離脱できたため報告する。

    【症例紹介】交通外傷後の意識障害のため人工呼吸器管理となった60歳代の男性。入院後,重症レジオネラ肺炎による呼吸不全増悪により酸素化指数(PaO2/FIO2 ratio:以下,P/F比)75のためVV-ECMOが導入された。前胸部では水泡音,背側下部では呼吸音減弱,胸部レントゲン画像では広範囲の浸潤影を認めた。そのため,両側下葉の広範な無気肺,気道分泌物の貯留が推察され,腹臥位療法を行った。

    【経過】腹臥位療法は1日2時間として,3日間実施した。実施後は多量の黄色膿性痰が吸引され,呼吸音の改善を確認した。また,1回換気量が250 mlから350 mlと増え,経皮的動脈血酸素飽和度は92%から96%へと即時効果を認めた。胸部レントゲン画像で浸潤影の改善,酸素化の改善(P/F比 = 163)を認めVV-ECMOを離脱した。

    【考察・まとめ】本症例においては,短時間の腹臥位を含めた頻回な体位管理にて,気道分泌物がドレナージされたことが酸素化の改善に寄与したと考えられる。

  • 五十嵐 達也, 伊藤 祐輝, 林 翔太
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 4 巻 p. 89-94
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/30
    [早期公開] 公開日: 2023/09/29
    ジャーナル オープンアクセス

    【はじめに】橋梗塞後に歩行中のlateropulsionを呈し,Gaze-stabilization exercises(以下,GSE)により静的立位・歩行の姿勢制御に即時的改善を認めた症例を経験したため報告する。

    【症例紹介】対象は左橋梗塞で入院した80歳代の男性であった。13病日にGSEのAdaptation exerciseを15分間実施した。介入前後に,開閉眼立位時と歩行時の前後左右方向の体幹加速度の振幅の実効値(Root Mean Square:以下,RMS),歩行周期時間の変動係数(Coefficient of Variation:以下,CV),快適歩行速度(Comfortable Walking Speed:以下,CWS)を評価した。

    【経過(結果)】介入前/後,RMSは開眼立位が前後0.036/0.054 m/s2,左右0.557/0.069 m/s2,閉眼立位が前後0.059/0.061 m/s2,左右0.753/0.151 m/s2,歩行が前後17.402/16.818 m/s2,左右20.761/9.770 m/s2,歩行時のCVは7.08/3.31%,CWSは0.39/0.56 m/sであった。介入4時間後のフォローアップ評価におけるCWSは0.48 m/sであった。

    【考察・まとめ】GSEにより前庭系の重みづけが代償的に変化したことで,姿勢制御に即時的な変化を認めたと考えた。

  • ~急性期と回復期のリハビリテーション経過~
    西村 充司, 山木 健司, 池上 泰友, 越智 淳子
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 4 巻 p. 95-102
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/30
    [早期公開] 公開日: 2024/04/04
    ジャーナル オープンアクセス

    【はじめに】HTLV-1関連脊髄症(HTLV-1-Associated Myelopathy:以下,HAM)の急速進行例に対して,ステロイド療法に併せたリハビリテーションにより,基本動作能力の向上を認めた。HAM急速進行例のリハビリテーション経過の報告は見当たらないため,今回,その経過を報告する。

    【症例紹介】60歳代の女性,約3ヶ月の短期間に歩行障害が進行し,体動困難で入院した。HAMの急速進行例と診断され,高用量ステロイド療法が行なわれた。

    【経過】寝返りや起き上がり動作も困難だったが,ステロイド療法に併せて,体幹機能に着目した床上動作練習により,寝返り・起き上がり・座位保持・車椅子移乗が可能となった。さらに,急性期から回復期にわたる歩行練習によって,歩行器歩行や伝い歩き,階段昇降が自立し,自宅退院した。

    【考察・まとめ】HAM急速進行例に対して,早期からの床上動作練習や歩行練習などのリハビリテーションにより,基本動作能力が向上し,歩行再獲得に至った。

  • ―大腿四頭筋筋力増強運動における膝関節屈曲角度に着目して―
    山田 大智, 高木 啓至, 多田 周平, 橋田 剛一, 佐藤 世羅, 大堀 智毅, 辻井 聡, 中田 研
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 4 巻 p. 103-107
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/30
    [早期公開] 公開日: 2024/05/02
    ジャーナル オープンアクセス

    【はじめに】前十字靭帯再建術(anterior cruciate ligament reconstruction:以下,ACLR)後に膝蓋腱炎由来の膝前方部痛(anterior knee pain:以下,AKP)を呈した症例を経験し,膝関節屈曲角度に着目した大腿四頭筋(quadriceps femoris:以下,QF)筋力増強運動を実施し,良好な経過を得たので報告する。

    【症例紹介】17歳女性。右膝前十字靭帯損傷,右外側半月板損傷に対し,右ACLRと右外側半月板縫合術が施行された。

    【経過】術後4.5ヵ月では膝蓋腱近位内側部,術後7ヵ月では膝蓋腱近位外側部にAKPが生じ,膝蓋腱炎と診断された。AKPが生じない膝関節屈曲角度でQF筋力増強運動を実施した結果,AKPとQF筋力の改善が両立でき,術後8ヵ月においてスポーツの完全復帰に至った。

    【考察・まとめ】ACLR後に膝蓋腱炎由来のAKPを呈した症例に対し,膝関節屈曲角度を考慮したQF筋力増強運動が,AKPとQF筋力の改善に有効であった。

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