抄録
本研究は,徒手による口腔内のマッサージが及ぼす生理的・主観的効果を明らかにすることを目的とした.健康な成人女性12名を対象者として,口腔内に10分間のマッサージを行い,効果を検証するためマッサージ前後に生理的・主観的評価を行った.結果は統計的分析を行ったところ,マッサージ後は唾液中のアミラーゼ活性が有意に低下し,心電図におけるR-R間隔は有意な増加がみられ,リラックスした状態であると考えられた.また,マッサージにより顔面の皮膚温は有意に上昇し,歯肉へのマッサージでは下顎中切歯部の血流量が有意に増加を示し,マッサージは血液循環の促進が期待できる.一方,主観的評価のPOMSのT得点は,マッサージ後に「緊張‐不安」,「疲労」の得点が有意に低下し,気分チェックリストにおいても,「緊張覚醒度」が有意に低下した.口腔内のマッサージは緊張や疲労感を軽減させ,リラクゼーション効果を与えることが示唆された.