抄録
本稿では、「21世紀のベーブ・ルース」と称される大谷翔平が、フェイクニュースが蔓延するグローバ
ルな環境の中で、メジャーリーグベースボール(以下MLB)の枠を超えて、どのように受容される可能
性があるかを危機管理の視点と結び付けて検討した。ベーブ・ルース、ジャッキー・ロビンソン、野茂英
雄の功績を踏まえ、大谷の歴史的な偉業として記録される投打二刀流の成功は、スポーツが文化交流を促
進し、フェイクニュースがもたらす社会課題に対抗できる可能性を秘めている。また、大谷の活躍は、戦
後の日本におけるアメリカ文化への熱狂を象徴するとともに、世界各地で生じる多様な差異を埋める上で
大きな意義を有している。先行研究のレビューを基に、大谷がMLB の主要人物として位置づけられるこ
とを示した上で、彼の道徳的資質と比類なき運動能力の発揮が、いかに寛容を広め、団結を高め、またグ
ローバルなリスクの予防に役立つ実践的な教訓を提供してくれる可能性があるかを示唆した。最終的には、
大谷がメディアの歪曲が蔓延する世界において、偏見に立ち向かい、多文化の調和を推進する統合の象徴
となる可能性があると結論づけた。