アルカリシリカ反応(以下ASR)を発生したコンクリートの供試体による変形挙動や変形特性の報告は多く,その変形特性も実験により明らかになって来ている。しかし,ASRは長期にわたり,その変形挙動もASRに追従する形で推移すると考えられるため,ASRによる変形特性の研究報告はほとんどが促進膨張を伴う試験によっている。また無筋コンクリートの膨張量は,残存膨張量を測定することにより推定できるとされているが,実構造物の多くは鉄筋コンクリートである。一方,実構造物においてASRを起した鉄筋コンクリート構造物を長期間にわたり経年観察し,変形挙動を報告した例は稀有であり,その変形挙動は明らかにされていない。本論文では,ASRを起した鉄筋コンクリート構造物を25年以上にわたり長期経年観測した結果を解析したところ,構造物がASRにより膨張し,最大値を示した後に収縮している現象が確認された。そこで,ASRの変形モデルを定式化し,構造物の実測結果と比較してASRを起こした鉄筋コンクリート構造物の収縮現象を含めた変形挙動を考察した。