2023 年 1 巻 1 号 p. 45-56
色覚多様性の概念は,未だ曖昧で共通認識が図れていない.本研究では,主に学校現場を対象とし,色覚多様性の概念に含まれる要素を体系的に整理することで,多様な色覚特性が包摂された社会をデザインするための研究や実践を促進するための土台づくりを目的とした.そのため,色覚多様性の観点から執筆された文献調査と,その著者3 名に対するインタビュー調査を実施し,質的分析を行った.結果,色による情報弱者を作らない「環境づくり」,「色覚異常」の児童生徒がポジティブな自己意識や社会における対応力を獲得する「エンパワメント」,知識の普及や土壌づくりを通じて色覚多様性の概念を社会に浸透させる「社会通念の形成[知識の普及+土壌づくり]」という 須長 正治九州大学大学院芸術工学研究院 抄 録 3 つの大項目を主題として設定し,各大項目に属する要素を項目表として整理した.それらは,色覚多様性の概念の一般化に向けた調査研究の実施や,実践活動に用いる教材や仕組みの開発など,用途に応じた活用が期待できる.