抄録
パルス磁場勾配を併用したNMR分光法(PFG NMR法)による粘土ゲル中の水の自己拡散係数計測実験を行った。StejskalとTannerによって1965年に開発されたこの方法は、計測対象とする原子核のランダムウォークによる空間移動を、核スピンの歳差運動の位相として記憶させ、パルス磁場強度の増大にともなうスピン·エコー強度の低下量を計測することによって原子核の自己拡散係数を求めることができる。この手法をヘクトライトゲル中の水分子の自己拡散係数の計測に応用した。比較的薄いゲル(粘土濃度が11wt%以下)中の水の自己拡散係数の粘土濃度依存性を、ランダムに散らばった障害物(拡散係数ゼロの結合水の層で挟まれたclay platelet)をよけながら非結合水(自己拡散係数がバルクの水と同じ)がゲルの空隙中をランダムウォークで移動するモデルで説明することができた。