抄録
温暖化にともなう水稲の収量の変動を予測するためには, 気象要因と水稲の収量の関係を定量的に明らかにしなければならない.本研究では, 平均気温が1℃ないし3℃上昇した場合に島根県下の標高の異なる5地点において, 堀江らのモデルによって気温と日長から収量と関係の深い出穂期の移動を, および棟方らのモデルによって登熟期の気温, 日照時間から, 収量に対する気温と日射の影響を表す潜在的登熟量を予測した.平年の気温よりも3℃上昇するとコシヒカリの出穂期の前進は13〜18日になり, その前進は標高の高いほど大きかった.この場合, コシヒカリの収量は気温の上昇とこの出穂期の前進とのために15%以上減少すると試算された.しかし, このような気温上昇の下でも潜在的登熟量を最大となるように最適穂ぞろい期を11日以上遅らせると, 潜在的登熟量の減少は小さくなり, 松江で6%, 赤名で13%の減収率で抑えることが可能なことが示された.