抄録
ビスフェノールA(BPA、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)は、年間約40-50万t製造・輸入され、そのうちの約9割がポリカーボネート樹脂とエポキシ樹脂の合成原料として用いられている。我が国では内分泌かく乱作用が社会問題となって以降、ポリカーボネート製ほ乳瓶や食器の製造及び販売はほとんど行われておらず、また、国内で製造される金属缶については、日本製缶協会のガイドラインにより溶出量が飲料缶で0.005 μg/mL以下、一般食品缶で0.01 μg/mL以下となっている。そのため、我が国のビスフェノールA曝露量は10年前に比べて大幅に低減され、欧米と比較しても低いレベルとなっている。一方で、BPAと構造の類似した化合物(BPA関連化合物)が年々増加してきている。ここではBPAの規制の現状および暴露状況に加え、BPA関連化合物の生態影響等について概説した。