適正な実験室環境を維持するためには 、 実験に従事する者が日常的な実験作業の中で自らの作業環境にお ける脆弱性を見つけられるようになることが理想的である 。 本研究では 、 学生の危険認識に関する知見を得 ることを目的として 、 VR(Virtual Reality) による仮想実験室と視線追跡技術を組み合わせ 、 学生が実験室 内の安全チェックを行う際の視線を解析するための被験者実験を行った 。 さらに 、 学生と安全管理者の結果 を比較することによって 、 視覚を通じた危険認識に及ぼす両者の経験や知識の差の影響について考察した 。 実験的検討により 、 学生が実験室で危険を探索する場合 、 部屋全体に視線を配るものの 、 対象を注視する時 間は短く 、 危険と認識する事項の数や不適切な状態を発見する数は必ずしも多くないという結果が得られた 。 また 、 学生が対象の危険性を見極めるために要する注視時間は安全管理者と比べて短い傾向にあり 、 危険と 感じるモノや状態に関する基準も安全管理者とは異なる特徴がある可能性が示唆された 。 実験の基本である 観察行動は 、 実験室の危険の発見にも非常に重要な役割を果たすことは明白であり 、 本研究で得られた学生 の危険認識に関する具体的な特徴や課題は 、 実験室の状態観察や危険認識を体験的にトレーニングする具体 的な実習教育教材にも展開可能な基礎的知見となることが期待される 。
抄録全体を表示