抄録
現在世界中において,生きたウイルスを利用してがんを治療するウイルス治療(Oncolytic Virotherapy)に関する前臨床研究,および臨床治験が積極的に行われている.弱毒化麻疹ウイルスは,世界中でワクチンとして利用され,その効果と高い安全性が確立されている.その一方,このウイルスは種々のがんに選択的に感染し,増殖することによって強力な腫瘍溶解性を発揮する.本稿では,分子生物学的な手法を広汎に用いた麻疹ウイルスと宿主の相互作用の解明と,その感染制御を利用しがんへ特異的に感染する腫瘍溶解性麻疹ウイルスの開発を中心に紹介する.