Drug Delivery System
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最新号
日本DDS学会
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
FOREWORD
OPINION
特集 “医薬品開発におけるがん患者由来非臨床モデル”  編集:古賀宣勝
  • 小原 有弘
    2024 年 39 巻 3 号 p. 154-164
    発行日: 2024/07/25
    公開日: 2024/10/25
    ジャーナル フリー
    がん細胞株は、創薬研究において欠くことのできない研究ツールとなっている。特に抗がん剤の非臨床薬効薬理研究において多用されており、多くの医薬品開発に寄与している。がん細胞は無限に増殖する能力を獲得しており、培養容器内で対数増殖するので、とても扱いやすい。がん細胞株が使用されるようになった初期には、さまざまな由来組織・臓器に基づくがん細胞株が多数樹立され、その後、細胞バンクなどに登録されて誰もが利用できるようになっている。一方で平面培養を主体とするがん細胞株は、培養容器の中で増殖の速い細胞のみを選択してしまうことから、生体のがんとは乖離しているなどの課題がある。しかしながら、がん細胞を詳細に解析することやゲノム編集などの遺伝子改変を行うには非常に有用であるので、多くの研究者が研究に活用しており、さらなる活用が期待されている。
  • 山脇 芳, 岡本 康司
    2024 年 39 巻 3 号 p. 165-173
    発行日: 2024/07/25
    公開日: 2024/10/25
    ジャーナル フリー
    本研究は、卵巣がん腹水から作製した患者由来スフェロイドパネルを確立し、卵巣がんの化学療法耐性メカニズムを明らかにすることを目的として行われた。プラチナ系化合物を使用した体系的評価により、スフェロイド間において感受性の違いが確認された。遺伝子発現プロファイリングと化学療法耐性データを組み合わせた統合解析により、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)およびグルタチオン産生酵素がシスプラチン耐性に寄与することが明らかとなった。これらの研究は、患者由来細胞モデルを用いた統合的解析アプローチが、がんの薬物耐性の分子基盤を明らかにするのに有効であることを示唆するものである。
  • 井上 正宏
    2024 年 39 巻 3 号 p. 174-183
    発行日: 2024/07/25
    公開日: 2024/10/25
    ジャーナル フリー
    オルガノイド培養法の発展に伴い、さまざまながん種でオルガノイド培養が可能になった。がんオルガノイドは、がんの特性、特に可塑性と多様性を保持した培養モデルである。がん種によっては高い成功率で短期間に患者腫瘍からオルガノイド培養を行うことができるようになったことから、患者個人に最適な治療法を選択する個別化医療や、スクリーニング、バイオマーカーの開発など、創薬でも用いられるようになった。がん細胞の応答を知るための手段として、ゲノムに代表されるスナップショット的な情報と相補的に利用されていくと考えられる。本稿ではがんオルガノイド培養の薬効薬理研究への応用の現状を解説し、解決すべき課題を示す。
  • 森 宣仁, 木田 泰之
    2024 年 39 巻 3 号 p. 184-191
    発行日: 2024/07/25
    公開日: 2024/10/25
    ジャーナル フリー
    腫瘍は世界中で多くの命を奪い続けており、がん研究や抗がん剤の開発、個別化医療のさらなる進展が求められている。しかし、従来の二次元や三次元の生体外培養システム、さらには、動物モデルは、実際の腫瘍の複雑性を完全に再現するには至らない。この問題に対処するため、流体デバイスを活用したin vitroでの腫瘍シミュレーションである腫瘍チップ(Tumor-on-chips)が注目されている。この技術は、既存のモデルを超え、実際の腫瘍環境をより忠実に再現する可能性がある。本稿では、最新の研究動向を踏まえ、腫瘍チップの設計に共通する5つのデザインパターンを探求し、それぞれの特性を詳細に解説する。本稿が、腫瘍チップの利用や設計に際しての実践的な指針となることを目指す。
  • 津村 遼, 髙島 大輝
    2024 年 39 巻 3 号 p. 192-200
    発行日: 2024/07/25
    公開日: 2024/10/25
    ジャーナル フリー
    ヒトがん細胞株をマウスに移植して作製したCDXモデルは、半世紀以上にわたってがんの研究を支えてきた。今もなお、低分子化合物からペプチド医薬、核酸医薬、抗体医薬、細胞療法等、さまざまなモダリティの薬効薬理試験に用いられている。一方で、近年では臨床のヒト腫瘍との不一致性が指摘されており、非臨床試験の薬剤スクリーニングに用いる動物モデルとしての有用性に懐疑的報告がされている。しかし、がんの薬効薬理研究、特にDDS研究において、CDXモデルは作製の簡便さや再現性の高さ、ハイスループット性から、未だに重要かつ有用な評価モデルであると考える。本稿では、CDXモデル作製に用いられる免疫不全マウスや移植方法、薬効薬理試験について、筆者らの研究成果を交えて紹介する。
  • 鈴木 雅実
    2024 年 39 巻 3 号 p. 201-209
    発行日: 2024/07/25
    公開日: 2024/10/25
    ジャーナル フリー
    Patient derived xenograft(PDX)モデルは、手術摘出ヒト腫瘍組織をin vitroで培養せず直接免疫不全マウスに移植し、継代維持することで樹立される。本モデルは、ヒト腫瘍組織の組織構造・細胞の形態ならびに分子生物学的、遺伝子生物学的な特性をよく保持し、腫瘍の多様性や複雑性を反映したモデルとして、分子標的治療薬の研究開発などに活用されている。PDXモデルは有用な研究ツールとなるが、その樹立、ならびに、樹立株の活用にあたっては、汎用されているin vitro培養腫瘍細胞株とは異なる研究計画の立案が必要となるなど考慮すべき点もある。それら留意点を含めPDXモデルの特徴を紹介する。
DDS製品開発の最前線
  • 近藤 隆, 芹ヶ野 孝則
    2024 年 39 巻 3 号 p. 212-216
    発行日: 2024/07/25
    公開日: 2024/10/25
    ジャーナル フリー
    デルゴシチニブは、ヒトヤヌスキナーゼ(JAK)1、JAK2、JAK3およびチロシンキナーゼ2に対する阻害活性を指標として、日本たばこ産業株式会社において見出された新規JAK阻害剤である。デルゴシチニブを含有するコレクチム軟膏0.5%が2020年6月に外用JAK阻害剤として世界で初めて発売され、またその翌年には0.25%軟膏が発売された。コレクチム軟膏の製剤化においては、原薬の物理化学的な安定性、軟膏の物理的特性評価、官能試験および保管安定性評価を実施し、使用感や保管安定性に優れる処方が必要であった。ここでは、開発の経緯、製剤設計、薬物動態、臨床試験成績についても紹介する。
DDSの「ちょっとした」技術・知識
[若手研究者のひろば]
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