本稿では、病変組織の治療と再生を同時に実現する足場ベース drug delivery system(DDS)について概説する。従来の骨組織工学用足場材料は、主として欠損部の空間保持および組織再生を目的としてきたが、感染、炎症、血流障害、骨代謝異常などを伴う複雑病態に対する治療機能は十分ではなかった。これに対し、足場ベースDDSは、抗体、タンパク質、低分子薬剤、機能性無機イオンを局所に保持・徐放することで、病変局所の微小環境を積極的に制御し、治療と再生を統合的に達成する新たな戦略である。特に、マクロからナノに至るマルチスケール構造制御は、細胞浸潤、血管新生、薬剤徐放、細胞応答を規定する上で重要である。筆者らの炭酸アパタイトハニカム足場を基盤とした抗体DDSや銀・銅イオンDDSを例に、複雑病態への応用可能性と今後の展望を論じる。