Drug Delivery System
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FOREWORD
OPINION
特集 “標的タンパク質分解誘導~新たな創薬モダリティ”  編集:畠山浩人
  • 城 智也
    2026 年41 巻2 号 p. 96-105
    発行日: 2026/03/25
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル フリー

    近年、細胞内外の特定タンパク質を選択的に除去する標的タンパク質分解(TPD:Targeted Protein Degradation)を応用した創薬研究が大きな注目を集めている。TPDを誘導する化合物は、細胞に内在するプロテアソーム経路やリソソーム経路における多様な分解機構を利用する。なかでも、PROTAC (Proteolysis Targeting Chimera)に代表されるキメラ型の分解誘導剤の臨床応用がこの数年で急速に進展し、社会実装の段階に近づきつつある。一方で、これらの臨床開発の過程において、実用化の観点では物理化学的性質に基づく薬物動態などの共通の課題が明らかになってきた。本稿では、TPDの概要とキメラ型の分解誘導剤の臨床試験の現状を概説し、これまでに浮かび上がってきた課題と、それらの克服に向けた今後の展望について論じる。

  • 森 友紀, 友松 翔太, 大竹 史明
    2026 年41 巻2 号 p. 106-114
    発行日: 2026/03/25
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル フリー

    標的タンパク質分解誘導法は、ユビキチンプロテアソーム系を利用する新たな創薬モダリティとして近年脚光を浴びている。主要な分解誘導薬であるPROTACやMolecular glueは、標的タンパク質(ネオ基質)とE3ユビキチンリガーゼを近接させることで、強制的に標的タンパク質をユビキ チン化しプロテアソーム依存的な分解誘導を誘導する。したがって、標的タンパク質分解誘導を高効率化・高精度化するうえで、ユビキチンプロテアソーム系の基礎に基づく分解誘導メカニズムを理解することは重要である。近年、タンパク質分解を促進するユビキチン鎖の高次構造(ユビキチンコー ド)の重要性が明らかになってきた。本稿では、ユビキチンプロテアソーム系の基礎的な作動原理とユビキチンコードについて概説した後、標的分解を制御する細胞内の調節因子と、それら因子による分解促進機構について、筆者らの成果も含めて紹介する。

  • 澤崎 達也, 山田 航大, 山中 聡士
    2026 年41 巻2 号 p. 115-125
    発行日: 2026/03/25
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル フリー

    標的タンパク質分解誘導薬(TPD)は、薬剤依存的に標的タンパク質とE3ユビキチンリガーゼとの相互作用を誘導し、タンパク質分解を引き起こす新たな創薬モダリティとして注目されている。その特異性は、薬剤が誘導するタンパク質ータンパク質間相互作用(PPI)により決定される。本稿では、コムギ無細胞タンパク質合成系とAlphaScreen法を用いた生化学的PPI解析、および近接ビオチン標識酵素AirIDを利用した細胞内・生体内TPD依存的インタラクトーム解析技術とその例について概説し、TPD創薬における特異性評価の重要性と研究の意義を紹介する。

  • 有竹 浩介, 濵村 賢吾
    2026 年41 巻2 号 p. 126-133
    発行日: 2026/03/25
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル フリー

    重度の喘息やアトピー性皮膚炎、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)などの病態形成に関与する創薬標的分子である造血器型プロスタグランジンD合成酵素(HPGDS)を標的とし、ユビキチン−プロテアソーム系を利用した分解誘導薬PROTAC-HPGDSを創出した。HPGDSの高分解能X線結晶構造情報に基づき特異的リガンドを設計し、E3リガーゼ結合リガンドと連結することで強力な分解活性を示す化合物を創製した。さらに、蛍光タンパク質融合HPGDS発現系を構築し、従来のウエスタンブロット法に依存しない迅速かつ経時的な分解活性評価系を確立した。本稿では構造生物学とタンパク質分解モダリティを統合した創薬戦略の一例として紹介する。

  • 伊藤 幸裕
    2026 年41 巻2 号 p. 134-142
    発行日: 2026/03/25
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル フリー

    ヒストン修飾酵素に代表されるリシン修飾酵素は、さまざまな細胞機能を制御し、がんをはじめとする多くの疾患に関与している。従来、これらの酵素を標的とした創薬研究では酵素阻害薬が中心であったが、酵素機能のみの阻害では十分な生物学的効果が得られない例も多い。これらの酵素は酵素機能に加えて足場機能を有することが重要であると理解され、タンパク質全体の機能を抑制する新たな創薬戦略が求められている。本稿では、タンパク質全体の機能を抑制することが期待されるタンパク質分解誘導薬(PROTAC)に着目し、筆者らが行ってきたHDAC8、G9a/GLP、KDM5Cを標的としたPROTAC創製研究を紹介する。

  • 村上 優貴, 寺山 慧
    2026 年41 巻2 号 p. 143-149
    発行日: 2026/03/25
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル フリー

    近年AIを活用した創薬技術は飛躍的に発展しており、新たな創薬モダリティとして期待されているPROTAC(proteolysis-targeting chimera)に代表されるタンパク質分解誘導剤開発においても、標的タンパク質の分解活性や細胞膜透過性などの特性予測、さらには分子生成AIを活用したリンカー設計等の新たな手法開発が進んでいる。本稿では、機械学習や分子生成AIを用いたPROTACの特性予測手法およびリンカー設計手法を概説し、さらに筆者らが開発を進めている強化学習に基づくPROTACのリンカー設計手法PROTAC-TSについて紹介する。こうした技術開発を土台としつつ、今後実験データの蓄積やAI手法の高度化が進むことで、データ駆動型の合理的かつ効率的なPROTAC設計へと繋がることが期待される。

  • 友重 秀介, 石川 稔
    2026 年41 巻2 号 p. 150-159
    発行日: 2026/03/25
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル フリー

    本稿では、標的タンパク質分解誘導技術をミトコンドリア局在タンパク質に展開した筆者らの成果を中心に、ミトコンドリア局在タンパク質分解誘導技術について紹介する。本技術では、ミトコンドリアに局在するプロテアーゼcaseinolytic protease P(ClpP)の活性化薬と標的タンパク質のリガンドをリンカーで連結した分解薬によって、標的タンパク質を強制的に活性化ClpPに近づけ、標的タンパク質の選択的な分解を誘導する。他グループによる研究との比較・考察、ならびにプロテアーゼを直接的に近接させるという本技術の特徴から、既存技術の比較と今後の展望についても議論する。

DDS製品開発の最前線
  • 羽賀 智宏, 市川 成実
    2026 年41 巻2 号 p. 160-166
    発行日: 2026/03/25
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル フリー

    細菌感染性中耳炎・外耳炎では、局所に高濃度で抗菌薬を投与できる点耳薬が有効であり、これは効率的なドラッグデリバリーシステム(DDS)の応用と位置づけられる。従来はオフロキサシンなどが用いられてきたが、耐性菌抑制や治療効果向上の観点から、PK/PD理論に基づきレボフロキサシン高濃度製剤「コムレクス耳科用液1.5%」が開発された。本剤は防腐剤を含まず、内耳毒性の懸念も少ないなど安全性に配慮された設計であり、強力な抗菌活性を持ち耐性化を誘導しにくい特長を有する。近年、耐性菌の増加が大きな課題となる中、コムレクスは初期治療において適切に使用されることで、治療効果の確実性を高めるとともに耐性化抑制に寄与し、患者に迅速な治癒をもたらすことが期待される。

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