Drug Delivery System
Online ISSN : 1881-2732
Print ISSN : 0913-5006
ISSN-L : 0913-5006
最新号
日本DDS学会
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
FOREWORD
OPINION
“抗体・薬物複合体のさらなる進化”  編集:眞鍋史乃
  • 秋葉 宏樹, 大野 浩章
    2025 年40 巻5 号 p. 340-349
    発行日: 2025/11/25
    公開日: 2026/02/25
    ジャーナル フリー
    抗体薬物複合体(ADC)の最適化戦略は従来のペイロードとリンカーの最適化から、抗体の最適化に及びつつある。特に、細胞内でのペイロードの効果的な放出を期待して、積極的に細胞内在化をもたらす二重特異性抗体などの設計が効果を発揮してきた。この中でバイパラトピックADCが近年大きく注目を集め、複数が治験入りしている。バイパラトピック抗体とは、標的分子の異なる2つのエピトープに結合する抗体であり、分子間を効果的に架橋し効率的な内在化をもたらしうる。筆者らはバイパラトピック抗体の設計指針を研究する中で、単なるバイパラトピックADCにとどまらず、2剤型の新機序ADCの設計につながる分子デザインを見出してきた。本稿においては、結合能制御などの側面を加え、抗体工学がADC最適化にもたらす発展を展望する。
  • 浅野 竜太郎, 三浦 大明
    2025 年40 巻5 号 p. 350-359
    発行日: 2025/11/25
    公開日: 2026/02/25
    ジャーナル フリー
    異なる2つの特異性を有する抗体は二重特異性抗体と呼ばれ、主に遺伝子組換え操作により作出される。がん治療薬を志向することが多く、特に、がん細胞とT細胞間の架橋戦略は古くから精力的に研究されている。二重特異性抗体の形態としては、天然IgG型と非天然型に大別されるが、いずれも均一な生産に向けて、さまざまな技術が考案されてきた。低分子量型の二重特異性抗体は、安価な微生物での調製と固形腫瘍への高い浸透性が期待できる。本稿では、天然IgG型と非天然型の二重特異性抗体の開発の歴史や医薬品としての上市例を概説した後、低分子二重特異性抗体の開発とその多面的な高機能化に関する筆者らの研究グループの取り組みを紹介したい。
  • 佐藤 優穂, 木下 崇司
    2025 年40 巻5 号 p. 360-366
    発行日: 2025/11/25
    公開日: 2026/02/25
    ジャーナル フリー
    抗体医薬品は高い抗原特異性と構造安定性をもち、がんや自己免疫疾患治療に広く用いられている。近年、抗体薬物複合体(ADC)は高い治療効果を示す新規モダリティとして注目されているが、複雑な構造により安定性低下が懸念される。ADCの物性評価にはラマン分光法や動的光散乱法(DLS)が有効であり、ラマン分光法では高濃度製剤の構造変化や安定性を非破壊的に解析できる。DLSでは、ADC作製工程における粒子径をモニタリングでき、反応の進行や凝集状態を確認できる。これらの手法はADCの品質管理や製造プロセスの最適化に貢献する。
  • 小郷 尚久, 市田 泰輝, 浅井 章良
    2025 年40 巻5 号 p. 367-377
    発行日: 2025/11/25
    公開日: 2026/02/25
    ジャーナル フリー
    次世代ADCの開発には、既存薬剤とは異なる作用メカニズムをもつペイロードの探索と、構造多様性に富んだ分子設計が不可欠である。筆者らは、KSP阻害活性を有するシステイン誘導体の構造活性相関研究を通じて、がん選択性をもつプロドラッグおよびADCのためのペイロードとしての可能性を見出してきた。さらに、酵素切断型リンカーを導入した薬物リンカーを合成し、カテプシンBによる切断性と構造依存的な反応性を検証した。本稿では、これらの知見を基にKSP阻害作用をもつ低分子化合物を活用した新規薬物リンカーの設計戦略とADCペイロードとしての展開可能性について概説する。
  • 樺山 一哉, 深瀬 浩一
    2025 年40 巻5 号 p. 378-384
    発行日: 2025/11/25
    公開日: 2026/02/25
    ジャーナル フリー
    核医学は診断から治療を統合する学問へ進展し、抗体は高い特異性によりセラノスティクスの中心的キャリアとなった。アルファ(α)線を用いたTATは短飛程・高LETにより少数の命中でDNA二本鎖切断を誘導し、低酸素や放射線抵抗性腫瘍にも有効である。その一方で、担体分子の局在や薬物動態の制御が治療効果を左右する。DDSの視点からは、核種の半減期と抗体動態を整合させる「時間設計」が鍵となる。特に211Atは抗体の集積時間と適合し、臨床実装に適した核種として日本が世界を先導している。89Zr-PETとの同型セラノスティクスやVHH・金ナノ粒子利用など新技術も展開し、免疫応答を誘導する知見も得られている。今後は核種供給、規制、分子設計、免疫療法との併用を統合することで、抗体ベースのTATは臨床腫瘍学の新たな柱となり得る。
  • 渡部 友博, 藤井 友博
    2025 年40 巻5 号 p. 385-392
    発行日: 2025/11/25
    公開日: 2026/02/25
    ジャーナル フリー
    抗体薬物複合体(ADCs)は、モノクローナル抗体と細胞毒性をもつ薬物を適切なリンカーで結合させたバイオ医薬品である。FDAに承認されるADCが増えている一方、従来用いられているVal-Citリンカーは、疎水性による凝集率の増加、薬物-抗体比(DAR)の制限および体内循環時のリンカー部分の不安定性等の課題がある。本研究では、カテプシンで切断可能なVal-Citに親水性アミノ酸残基を組み込み、さらに抗体-ペイロード間の距離を縮めることによる抗体のマスキング効果を高めるため、切断性リンカーを抗体とペイロードを結ぶ直線の分岐位置(Exo位置)に導入した。本稿では、従来のVal-Citリンカーに対するExo-linker ADCの生物学的評価における優位性について、薬物動態および腫瘍増殖抑制効果に焦点を当てて議論する。
  • 白砂 圭崇, 周郷 司
    2025 年40 巻5 号 p. 393-400
    発行日: 2025/11/25
    公開日: 2026/02/25
    ジャーナル フリー
    機能性核酸のデリバリーシステムとしては、当初より脂質ナノ粒子(LNP)が用いられてきたが、近年では化学修飾技術の進展により、リガンドを直接核酸に結合させるコンジュゲート型デリバリーシステムが注目されている。しかしながら、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を除いて有用性の高いリガンドは未だ限られており、その報告も多いとは言い難く、特に肝臓以外へのデリバリーを実現するリガンドが切望されている。本稿では、高い特異性と安定性を有し、多様な臓器への送達の可能性がある抗体をリガンドとして用いる「抗体–核酸コンジュゲート」に焦点を当て、抗体が集積する組織への核酸送達を目的としたこれまでの研究の歩みを概観する。
TOPICS
DDS製品開発の最前線
  • 入谷 雅士, 谷口 保
    2025 年40 巻5 号 p. 421-426
    発行日: 2025/11/25
    公開日: 2026/02/25
    ジャーナル フリー
    ジフェリケファリン酢酸塩(製品名:コルスバ静注透析用シリンジ17.5μg、同25.0μg、同35.0μg)は、米国Cara Therapeutics社が開発した新規静脈投与のκオピオイド受容体作動薬である。本邦では丸石製薬株式会社が2013年4月に日本における開発を開始し、2017年3月からキッセイ薬品工業株式会社と共同で臨床試験を実施した。既治療のそう痒症を有する血液透析患者を対象とした国内第Ⅲ相臨床試験で有効性および安全性が確認されたことから、製造販売承認申請を行い、2023年9月に「血液透析患者におけるそう痒症の改善(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を効能または効果として承認を取得、同11月に薬価収載、同12月に販売を開始した。本剤は透析終了時の返血時に透析回路静脈側より注入するプレフィルドシリンジ製剤であり、水分摂取制限や嚥下機能低下に影響されず、医師の管理のもと投与が可能である。
DDSの「ちょっとした」技術・知識
若手研究者のひろば
学会印象記
feedback
Top