抄録
補体系は、自然免疫系の1つであり、初期の異物認識機構で中心的な役割を果たしており、病原体だけでなく、人工のナノ粒子の排除にも深く関わっている。補体系の活性化(カスケード反応)に伴い、生物学的活性をもつさまざまな分子が生成され、異物の貪食や炎症反応を誘導している。ナノ粒子の物性に応じて補体の活性化の程度はさまざまに変化するため、ナノ粒子の予期せぬ体内動態変化や毒性発現が想定されている。このような現象はナノ粒子による薬物送達効率を低下させるため、ナノ粒子に対する補体活性化機構を理解することは、非常に重要である。一方で、補体活性化に伴う免疫活性化は、ナノ粒子を用いたワクチンへ応用することが可能であると考えられる。本稿では、ナノ粒子に対する補体活性化の負と正の両側面について紹介する。