抄録
生体内で防御機構を担う抗体は、特異的な抗原認識や生体内における高い安定性といった特性を生かし、医薬品として広く用いられるようになった。その背景には、抗原性の低下やエフェクター機能増強、抗体の低分子化や多重認識能の付与などの抗体エンジニアリングの取り組みが行われており、これによって、単なる標的抗原の中和だけではなく、多彩な機能を発揮することを可能にした。近年では、抗体の最も大きな特徴である特異的な抗原認識能を利用して、薬物の送達素子として活用する事例が多く、腫瘍組織や中枢神経組織への薬物送達など、かつては創薬における大きな課題であった点を克服しつつあり、抗体を活用したDDSに注目が集まっている。