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OK-432溶解液とリピオドールとの混合液のエマルジョン化の判定
利野 靖今田 敏夫天野 富薫松本 昭彦本橋 久彦
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1996 年 11 巻 2 号 p. 111-118

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抄録

筆者らは,後腹膜リンパ節転移に対し,OK-432を局注し,リンパ指向性を持たせ,局注した範囲を透視下で知るのと同時に徐放性を持たせることを検討している.そこで,OK-432とリピオドールとの混合液の外観と顕微鏡下での相分離の過程と,エマジョンの状態を経時的に観察した.OK-432を生理食塩水で混和,リピオドールと懸濁したが,安定したエマルジョンは得られなかった.(1)そこで,非イオン性造影剤であるイオパミロン300を生理食塩水の代わりに用いたが,混合直後から水相の合一が観察され,3時間後にはすでに相分離を起こしていることが外観の観察から確認された.(2)また水相と油相の比重差を軽減した処方でのエマルジョンでは,合一の速度は抑制できなかったものの,沈降,浮上の要因は解消された.しかし,(1)と同様の経過をとり,より安定したエマルジョンは得られなかった.このように沈降と浮上による合一が避けられたものの,相分離が進行するのは水相同士の接触による合一の確率が高いというところに起因すると推測し,さらに水相と油相の混合体積比をかえた実験を試みた.(3)比重差を軽減した水相の体積を従来の半分にまで下げ,水相:油相が3:1のところを6:1にし,エマルジョンを調製したところ,かなりの安定化傾向が得られた.これらの結果から,この系では安定したエマルジョンの状態が保持されているものと考えられた.筆者らは後腹膜リンパ節転移に対し,OK-432を局注する処方として,(1),(2),(3)の処方を考えた.(3)のような,比重だけでなく体積比も考慮した処方は,筆者らの目的に適した処方であると考える.

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