Dental Medicine Research
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原著
客観的評価に基づいた頬舌的顎堤断面形態診査用スケールの有用性に関する研究
樋口 貴大石原 広佐藤 裕二北 川 昇原 聰石橋 彩子
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2009 年 29 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

日常臨床で質の高い全部床義歯治療を提供するには, 簡便で, かつ客観性に優れた顎堤検査を行うことが重要である. そこで, 当教室の研究で判明している頬舌的顎堤断面形態に関する評価判別のための基準値から, 簡便で精度の高い評価を行うための診査用スケールを新たに開発し, 本スケールの有用性を検討した. 当教室の臨床経験7年以上の者8名と3年未満の者8名を評価者とし, 主観的評価と診査用スケールを用いた評価を行った. 評価部位は上下顎無歯顎者の研究用模型 (100組) の左右第一大臼歯相当部顎堤とし, 両評価とも4段階 (U型, 中間, V型, 平坦) で評価した. さらに, 客観的評価としてデジタル式ノギスを用いて上顎は歯槽頂から3mm, 下顎は2mmの距離における頬舌的な顎堤の幅を計測した. 主観的評価と客観的評価の関係では, 臨床経験を問わず評価者間の一致度を示すカッパ値は低かった (上顎: 臨床経験7年以上0.30, 臨床経験3年未満0.28, 下顎: 臨床経験7年以上0.38, 臨床経験3年未満0.19). スケール評価と客観的評価との関係では, カッパ値は高かった (上顎: 臨床経験7年以上0.65, 臨床経験3年未満0.71, 下顎: 臨床経験7年以上0.63, 臨床経験3年未満0.57). 以上の結果から, 頬舌的顎堤断面形態の評価に, 新たに開発した診査用スケールを用いることの有用性が示され, 臨床経験を問わず顎堤検査の精度が向上する可能性が示された.

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© 2009 昭和大学・昭和歯学会
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