Dental Medicine Research
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原著
Tulobuterolは共存培養系において破骨細胞形成を促進する
府川 有紀子臼井 通彦天野 均山本 松男山田 庄司
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2009 年 29 巻 1 号 p. 8-13

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抄録

選択的β2アドレナリン受容体アゴニストの代表薬であるtulobuterolは, 気管支拡張作用を有することから主に気管支喘息治療薬として用いられている薬剤である. 近年, 交感神経系を介した骨代謝調節機構が明らかになってきた. この機序は, β2アドレナリン受容体を介して骨吸収が亢進し, 最終的に骨量の低下を引き起こすと考えられている. しかしながら, その詳細は明らかではない. そこで本研究では, β2アドレナリン受容体を介する破骨細胞形成の機序を明らかにするため, 骨髄間質細胞株ST2-T細胞と破骨細胞前駆細胞を含むマウス骨髄細胞による共存培養法にtulobuterolを添加する破骨細胞培養系を確立した. RT-PCR法の結果, 骨髄間質細胞および骨芽細胞でβ2アドレナリン受容体の発現が確認され, tulobuterolは共存培養系において破骨細胞形成を促進した. また, β2アドレナリン受容体アンタゴニストであるbutoxamineにより, tulobuterolによる破骨細胞形成は阻害された. 一方, 骨髄細胞単独培養系にtulobuterolを添加しても破骨細胞は形成されなかった. さらにtulobuterol添加によりST2-T細胞におけるreceptor activator of NF-κB ligand (RANKL) mRNAの発現亢進および細胞内cyclic adenosine 3′5′-monophosphate (cAMP) 量が上昇したことから, 破骨細胞形成のシグナル伝達にはcAMP伝達系が関与していることが推察された. 以上の結果から, tulobuterolが骨髄間質細胞もしくは骨芽細胞に発現するβ2アドレナリン受容体を介して, 骨髄細胞内の破骨細胞前駆細胞を破骨細胞へと分化させることが明らかになった.

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© 2009 昭和大学・昭和歯学会
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