Dental Medicine Research
Online ISSN : 2186-540X
Print ISSN : 1882-0719
ISSN-L : 1882-0719
原著
補綴治療が無歯顎者の咀嚼機能に与える影響
今井 智子北川 昇佐藤 裕二山口 麻子桑澤 実希
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 31 巻 2 号 p. 143-150

詳細
抄録

8020運動の推進や国民の口腔健康への関心の高まりにより, 現在歯数は増加傾向にある. 一方で, 無歯顎者にはインプラントオーバーデンチャーという選択肢も広がりつつある. 本研究では, 無歯顎者に対するインプラントオーバーデンチャーの補綴治療が咀嚼機能をどこまで有歯顎者に近づけているかを明らかにすると同時に, 各群の問題点を抽出することを目的とした. 性別と年齢をマッチングさせた上で, 多数歯残存の高齢者 (有歯顎群) 10名, 下顎インプラントオーバーデンチャー装着者 (IOD群) 10名, 全部床義歯装着者 (CD群) 10名の3群を対象に, 反復唾液嚥下テスト, 口腔乾燥臨床診断基準, 身体社会的条件, 口の問題の調査, QOL評価, デンタルプレスケールによる咬合力評価, 寒天篩分法による咀嚼能率評価, 咀嚼スコア (摂食可能食品の割合) の算出を行った. その結果, CD群は咬合力, 咀嚼機能は低いものの, 咀嚼スコアでは満足していることが示された. IOD群では, 有歯顎群に比較して, 咬合力, 咀嚼スコアは低いものの, 咀嚼能率は同等であり, 食形態や硬さを考慮すれば, 摂取が困難になることはないと考えられた. また, 口臭や口の問題でみじめな気がしたなど審美面も気にしており, 多方面から補綴治療を考えていくことが重要である. 有歯顎群は咀嚼自体の問題はないものの, 誤咬や食べ物がはさまることが大きな問題であり, 加齢に対応した適切な歯科治療が課題であろう.

著者関連情報
© 2011 昭和大学・昭和歯学会
前の記事 次の記事
feedback
Top