Dental Medicine Research
Online ISSN : 2186-540X
Print ISSN : 1882-0719
ISSN-L : 1882-0719
31 巻, 2 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
原著
  • 松橋 智史, 内田 圭一郎, 佐藤 裕二
    2011 年 31 巻 2 号 p. 95-101
    発行日: 2011/07/31
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
    無歯顎患者に対するインプラントオーバーデンチャーには, 様々なバーアタッチメントを用いた補綴処置が行われてきた. しかしながら, バーのカンチレバー部の長さとインプラントに加わる荷重に関して, 十分な検討がなされているとはいえない. そこで本研究では, 磁性バーアタッチメントを用いたインプラントオーバーデンチャー症例において, カンチレバー部の長さの影響を明らかにすることを目的として, バイオメカニクス的解析を行った. 研究の対象は, 左右オトガイ孔間にインプラントを4本埋入し, 磁性アタッチメントキーパーをインプラントの近遠心に5個配置し, 白金加金鋳造バーを装着した下顎無歯顎患者6症例 (12側) とした. まず, バーアタッチメントを装着した口腔内状態を再現したシリコーン製研究用模型を作製した. 次に, 研究用模型の写真を撮影し, それらの画像を用いて下顎オーバーデンチャーの第一大臼歯に咬合力を負荷した状態において, ①オーバーデンチャー, ②バーアタッチメント, ③インプラント体, に対する荷重解析を段階的に行った. その後, バーアタッチメントとオーバーデンチャーが離脱しない限界の咬合荷重について, カンチレバーの遠心先端を1 mmずつ延長した状態を計算式によりシミュレートし, 三次元幾何学解析を行った. 本研究結果から, インプラント体への咬合荷重が増加するにしたがって, 4本それぞれに異なった荷重負担率となることが示された. 特に, バーアタッチメントを支持するインプラントの中で, 最遠心部のインプラントに対しては咬合荷重の約2.7倍の垂直荷重が加わることが明らかとなった. また, カンチレバーを延長するにしたがって, さらに荷重負担率に大きな差が生じた. カンチレバーを延長すると義歯が転覆せずに負担しうる咬合荷重は増加し, 特に10 mm以上の延長で著しく大きくなった. したがって, バーアタッチメントのカンチレバーを延長することは義歯の支持には有効であるが, 必要以上の延長は一部のインプラントに対して過大な負担を生じる可能性が示唆された.
  • 田邉 怜, 藤島 昭宏, 真鍋 厚史, 宮﨑 隆, 槇 宏太郎
    2011 年 31 巻 2 号 p. 102-112
    発行日: 2011/07/31
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
    本研究では矯正用接着剤の接着性向上に適した接着前処理法の評価を行うことを目的とした. ブラケット接着面には3種類の表面処理 (GRD, ASB, MDP), 2種類の表面改質処理 (TBC, SLP) を施した. 各接着前処理後, 3種類の矯正用接着剤 (MMA, CMPT, RMGIC) を用いて, 牛歯エナメル質に接着させ, せん断接着強さを測定した. 試験片の保管条件は, 37ºCの脱イオン水中に24時間保管, 5ºCと60ºC, 交互に30秒間浸漬の条件下で5000回のサーマルサイクル負荷を加えた2条件について行った. その後, 破断面上の残留セメント率の画像解析による計測を行った. また, 同様に未処理の金属製ブラケットに対する接着強さの測定も行った. その結果, ジルコニア製ブラケットに対する表面処理効果は, MDP, SLP処理においてGRD処理と比較して顕著に高いせん断接着強さを示した. さらに, 接着試験後の破断面からMDP, SLP処理ではすべてのセメントにおいて, 60%以上の高い残留セメント率を示した. 以上の結果から, 試作ジルコニア製ブラケットに対するMDP, SLP処理は, すべての矯正用接着剤に対して接着性を向上させる, 有効な接着前処理法であることが認められた. MDP, SLP処理は, サーマルサイクル負荷後においても, いずれの矯正用接着剤においても接着強さの低下は認められず, メタルブラケットと同等の接着強さを示し, 接着耐久性は良好であった.
  • —乳歯列完成期小児の捕食時口唇圧について—
    加藤 里英, 船津 敬弘, 杉山 智美, 冨田 かをり, 佐藤 昌史, 向井 美惠, 井上 美津子
    2011 年 31 巻 2 号 p. 113-122
    発行日: 2011/07/31
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
    唇顎口蓋裂は発生頻度の高い先天異常であり, 治療や療育にはさまざまな分野からのアプローチが必要とされているが, 摂食や口唇閉鎖などの口腔機能面でのアプローチは未だ十分に行われていない. そこで, 唇顎口蓋裂児の口腔機能の発達を解明するために, 小型圧センサを埋め込んだスプーンを用いて片側性唇顎口蓋裂児の口唇正中部, 口唇側方部 (破裂側および非破裂側) の3点から捕食時垂直的口唇圧の測定を行った. 対象は乳歯列完成期の片側性唇顎口蓋裂児 (Cleft群) 23名で, 健常小児 (N群) 25名を対照群とした. 解析項目は, 捕食時口唇圧, 陰圧, 捕食時作用時間, 捕食時圧積分値とし, それぞれについて検討を行った. 捕食時口唇圧はCleft群がN群と比較して正中部で有意に小さかった. 陰圧はCleft群とN群で殆ど差は認められなかった. 捕食時作用時間は, Cleft群がN群と比較して有意に長い値を示した. また, 捕食時圧積分値は両群で有意差はみられず同程度であった. 以上よりCleft群はN群と比較して弱い口唇圧を捕食時の作用時間の長さで代償していることが示唆された.
  • Rie YAMAKI, Zutai ZHANG, Yasuhiro HOTTA, Yukimichi TAMAKI, Takashi MIY ...
    2011 年 31 巻 2 号 p. 123-129
    発行日: 2011/07/31
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
    Casting investments are used by mixing a powder and liquid, and there is a risk of fine powder inhalation causing respiratory disease. Previously, we investigated paste-paste type phosphate-bonded investment with oils. The objective of the present study was to produce paste-paste type phosphate-bonded investments with colloidal silica. Two pastes (PA and PB) were formed before the test. PA was an acidic mixture of cristobalite and magnesium dihydrogenphosphate solution, and PB was an alkaline mixture of MgO in colloidal silica solution. Five experimental investments (PB5, PB10, PB15, PB20, PB25) containing 5, 10, 15, 20, and 25 ml, respectively, of colloidal silica in PB were evaluated. Commercial phosphate-bonded investment was used as a control. PB5 took a long time to set (12 h or more), had no setting expansion, and its compressive strength was very small. Its thermal expansion and XRD analysis results were almost the same as those from the other experimental investments. The setting expansions of PB20 and PB25 were 0.40% and 0.62%, respectively, and they took approximately 16 min to set. These values were close to those of control. Full coverage cast crowns obtained from the experimental investments had a loose fit compared with the control. The gap with the crowns cast from PB20 was smaller than those of other experimental investments, and it showed no significant difference compared to that of the control. These results suggest that it is possible to produce pastepaste type investments using colloidal silica. This limited study suggests that the experimental investment with PB20 is suitable for clinical use.
  • —正貌硬組織における対称性評価—
    森田 明子, 渋澤 龍之, 新 真紀子, 伊集院 公美子, 藤川 泰成, 槇 宏太郎
    2011 年 31 巻 2 号 p. 130-135
    発行日: 2011/07/31
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 両側顎関節内障を伴う不正咬合患者を対象として, 両側顎関節内障と顎顔面形態との関連性, 特に顔面非対称との関わりを解明することを目的とした. 不正咬合の改善を主訴として昭和大学歯科病院矯正歯科を受診し, 顎関節症状を有していたためMRI検査を施行した患者163名のうち, 両側顎関節に円板転位を認める患者85名を対象とし, 両側円板転位のみを有する患者25名をDD群 (平均年齢 23.6±6.1), 片側下顎頭のみに骨変化を有する患者17名をUOA群 (平均年齢 30.7±9.6), 両側下顎頭に骨変化を有する患者43名をBOA群 (平均年齢 28.5±8.8) とした. また, MRI検査の結果, 両側顎関節に円板転位および骨変化を認めなかった患者11名 (平均年齢 27.5±6.2, 以下N群) を対照群とし, 正面頭部X線規格写真を用いた顎顔面形態の検討を行った. N群のY-Me (DD群: p<0.05, UOA群: p<0.01, BOA群p<0.01), Mo-diff (BOA群p<0.05), ∠Hlf (DD群: p<0.01, UOA群: p<0.01, BOA群p<0.01), ∠Ocl (UOA群: p<0.05) においてほかの群との間に有意差が示された. また, UOA群は, 1名を除いた全ての患者において, より病態の進行しているOA側への下顎骨の側方偏位が認められたが, DD群およびBOA群はUOA群とは異なり, その偏位方向に規則性は認められなかった. 以上の結果から, 両側性顎関節内障患者における顎顔面非対称は, 片側にOAを有する患者だけの臨床的特徴でなく, 両側の円板転位を有する患者やOAを両側に有する患者にも発現することが明らかとなった. したがって, 両側性顎関節内障においてはその病態進行にかかわらず顎顔面非対称を惹起する可能性が示唆された.
  • —裂型別にみる哺乳障害の現状アンケート調査—
    薄井 俊朗, 山本 佐藤 友紀, 菱田 桃子, 倉林 仁美, 泉 朝望, 両川 ひろみ, 槇 宏太郎
    2011 年 31 巻 2 号 p. 136-142
    発行日: 2011/07/31
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
    Presurgical Nasoalveolar Molding治療 (以下NAMと略す) は口唇口蓋裂乳児に初回口唇閉鎖手術前に行う術前顎矯正治療である. 本研究はNAMに対する口唇口蓋裂患児の哺乳に対する影響を調査した. 2004年4月から2008年1月までに昭和大学口蓋裂診療班にてNAM治療後に初回口唇鼻形成術を行った患児の保護者145名に, NAM治療前後, 初回口唇鼻形成手術後の哺乳状況についてのアンケート調査を行い回答率86.2%にて以下の結果を得た. 1) NAM治療は矯正効果を主目的とするが哺乳の改善効果も有意に認められた (p<.05). 2) UCLP全体の0.5%はNAM治療前には哺乳に問題がなかったにもかかわらずNAM治療後に哺乳に問題を生じていた. 3) BCLPにおいては, 口唇鼻形成手術は有意な哺乳改善効果が認められなかった. 以上の結果よりNAM治療は患児の哺乳改善に効果があることが示唆された.
  • 今井 智子, 北川 昇, 佐藤 裕二, 山口 麻子, 桑澤 実希
    2011 年 31 巻 2 号 p. 143-150
    発行日: 2011/07/31
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
    8020運動の推進や国民の口腔健康への関心の高まりにより, 現在歯数は増加傾向にある. 一方で, 無歯顎者にはインプラントオーバーデンチャーという選択肢も広がりつつある. 本研究では, 無歯顎者に対するインプラントオーバーデンチャーの補綴治療が咀嚼機能をどこまで有歯顎者に近づけているかを明らかにすると同時に, 各群の問題点を抽出することを目的とした. 性別と年齢をマッチングさせた上で, 多数歯残存の高齢者 (有歯顎群) 10名, 下顎インプラントオーバーデンチャー装着者 (IOD群) 10名, 全部床義歯装着者 (CD群) 10名の3群を対象に, 反復唾液嚥下テスト, 口腔乾燥臨床診断基準, 身体社会的条件, 口の問題の調査, QOL評価, デンタルプレスケールによる咬合力評価, 寒天篩分法による咀嚼能率評価, 咀嚼スコア (摂食可能食品の割合) の算出を行った. その結果, CD群は咬合力, 咀嚼機能は低いものの, 咀嚼スコアでは満足していることが示された. IOD群では, 有歯顎群に比較して, 咬合力, 咀嚼スコアは低いものの, 咀嚼能率は同等であり, 食形態や硬さを考慮すれば, 摂取が困難になることはないと考えられた. また, 口臭や口の問題でみじめな気がしたなど審美面も気にしており, 多方面から補綴治療を考えていくことが重要である. 有歯顎群は咀嚼自体の問題はないものの, 誤咬や食べ物がはさまることが大きな問題であり, 加齢に対応した適切な歯科治療が課題であろう.
  • 山口 麻子, 北川 昇, 佐藤 裕二, 桑澤 実希, 今井 智子
    2011 年 31 巻 2 号 p. 151-160
    発行日: 2011/07/31
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
    超高齢社会を迎えた日本では, 高齢者の有する全身疾患, 加齢変化に対応した高齢者歯科医療が求められている. しかし, 高齢歯科患者の有する全身疾患の重篤度, 特有の生活習慣, 社会的背景が高齢者歯科医療の難易度に及ぼす影響は明らかではない. そこで, 高齢者歯科医療の難易度を評価する際に影響を及ぼす項目の抽出を目的として, 本学歯科病院高齢者歯科を受診した65歳以上の患者167名に全身疾患の重篤度, 特有の生活習慣, 社会的背景, 服用薬剤に関する実態調査を実施し, 高齢者歯科医療の難易度評価との関連性を検討した. その結果, 対象者の82%が複数の全身疾患を有していた. 74%が高血圧症, 心疾患, 脳血管障害のいずれかであり, 降圧剤, または抗凝固薬・抗血小板薬を服用していた. また, 悪性腫瘍, 視力障害, 聴力障害, 睡眠障害, 骨粗鬆症の頻度も多いことが明らかになった. さらに, 多重ロジステック回帰分析の結果, 糖尿病, 心疾患, 肝炎, 認知症, 通院の5項目が高齢者歯科医療の難易度評価と関係していた. 以上の結果から, 高齢者の全身疾患の重篤度, 特有の生活習慣, 社会的背景のうち, 糖尿病, 心疾患, 肝炎, 認知症, 通院が高齢者歯科医療の難易度評価に大きな影響をおよぼすことが示唆された.
症例報告
  • 藤川 泰成, 澁澤 龍之, 槇 宏太郎
    2011 年 31 巻 2 号 p. 161-168
    発行日: 2011/07/31
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
    患者は初診年齢18歳7カ月の男性, 前歯でものが噛み切れないということを主訴に来院した. 変形性関節症を伴う開咬症例で, 開口障害はみられなかったが, 顎関節部の圧痛が認められた. そこでスタビライゼーションスプリントを装着して, 顎関節症状の改善および下顎位の安定が得られたところで歯科矯正診断を行い, 上下第一小臼歯を抜去し, エッジワイズ装置による治療を行った. 変形性関節症を伴う開咬症例の歯科矯正治療では, 治療中に下顎頭の退行性変化による下顎骨の後退に配慮しなければならない. 本症例では, 下顎位の確認を行ってから治療方針を設定することにより, 前歯の被蓋, 大臼歯関係の改善および良好な顎機能を得ることができたので報告する.
クリニカル・テクノロジー
  • 増田 宜子
    2011 年 31 巻 2 号 p. 169-173
    発行日: 2011/07/31
    公開日: 2013/03/19
    ジャーナル フリー
    従来, 見えない手探りの処置であった根管処置に際して, 近年マイクロスコープが使用され始め, 歯内治療において治療の可視化と精密化が可能となり様々な困難な症例に対して積極的に取り組めるようになった. 根管の探索, 根管内異物の発見・除去, 歯根破折の発見, 穿孔部の発見と封鎖, 外科的歯内療法などが可視化によってより正確に行われ過剰切削や穿孔等の偶発症をなくし低侵襲な手術によって術後の痛みや腫れが減少した. その結果治療の成功率も向上している. また, 拡大された治療画像を記録することによって, 患者に対して現在の患歯根管の正確な状態を示しながら説明することができ, 信頼関係の構築にも役立っている. さらに拡大された根管治療映像を見ることによって今まではわからなかった根管治療の詳細なテクニックや様々な根管の形態を臨床研修医や学生が学べるようになり教育においても重要な役割を果たしている.
臨床講座
寄稿
特集
抄録集
feedback
Top