超高齢社会を迎えた日本では, 高齢者の有する全身疾患, 加齢変化に対応した高齢者歯科医療が求められている. しかし, 高齢歯科患者の有する全身疾患の重篤度, 特有の生活習慣, 社会的背景が高齢者歯科医療の難易度に及ぼす影響は明らかではない. そこで, 高齢者歯科医療の難易度を評価する際に影響を及ぼす項目の抽出を目的として, 本学歯科病院高齢者歯科を受診した65歳以上の患者167名に全身疾患の重篤度, 特有の生活習慣, 社会的背景, 服用薬剤に関する実態調査を実施し, 高齢者歯科医療の難易度評価との関連性を検討した. その結果, 対象者の82%が複数の全身疾患を有していた. 74%が高血圧症, 心疾患, 脳血管障害のいずれかであり, 降圧剤, または抗凝固薬・抗血小板薬を服用していた. また, 悪性腫瘍, 視力障害, 聴力障害, 睡眠障害, 骨粗鬆症の頻度も多いことが明らかになった. さらに, 多重ロジステック回帰分析の結果, 糖尿病, 心疾患, 肝炎, 認知症, 通院の5項目が高齢者歯科医療の難易度評価と関係していた. 以上の結果から, 高齢者の全身疾患の重篤度, 特有の生活習慣, 社会的背景のうち, 糖尿病, 心疾患, 肝炎, 認知症, 通院が高齢者歯科医療の難易度評価に大きな影響をおよぼすことが示唆された.
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