2013 年 33 巻 3 号 p. 236-241
細菌は,外来性遺伝子を取り込んで,その形質を大きく変化させることが知られている.近年,この外来性遺伝子の排除機構として,Clustered regularly interspaced short palindromic repeat (CRISPR)/Cas システムが注目されている.このシステムは,外来性遺伝子断片を,その菌のCRISPR と呼ばれる領域に取りこむことで記憶し,次に同じ外来性遺伝子が侵入してきたときに,転写されたCRISPR/Cas の複合体を介して分解して排除する機能である.これまでCRISPR/Cas システムは,外来性遺伝子の排除機構として注目されてきたが,単なる排除機能ではなく,菌に入り込む外来性遺伝子の分別やゲノムの再構成そのものの制御を行い細菌の進化そのものにも関与していることが明らかとなってきた.