昭和歯学会雑誌
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骨格性下顎前突の外科矯正移行に関する判定因子について
-特に栂指尺側種子骨出現以後の下顎骨成長抑制効果に関連して-
小松 純一柴田 恭典
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1991 年 11 巻 2 号 p. 138-146

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抄録

活発な思春期性成長発育のピークを過ぎたいわゆる思春期後期の下顎前突症例のなかには, 相当な期間下顎の成長抑制を行ったにもかかわらず, 前後的な顎関係の改善のために更に外科的処置が必要となる症例がある.成長の予測が不可能な現在においてはこのような症例を初診時に予測することは困難である.そこで何らかの手段によって将来の外科的処置必要症例の予測が可能か, またその判定に関与する因子は何かについて臨床的な検討を行った.資料として, 昭和大学歯科病院矯正科に来院した女子下顎前突者38症例を用いた.いずれも初診時, 思春期後期にありchin capを使用して治療を行った.それらのうち外科的矯正治療に移行した12例 (ope群) と, 矯正治療のみで治療を終了した26例 (non-ppe群) に分け, (1) 初診時, 擁骨癒合時 (RU時) における両群の顎顔面部の形態的相違, ならびにその間の変化様相の相違, (2) Gnathion (Gn) における位置的変化, (3) Gnの変化量と初診時計測項目との相関, 以上の3項目について調査を行った.その結果, 次の結論をえた.すなわち, (1) 初診時での両群間における上下顎関係には特徴的な相違は認められなかったが, RU時までにope群はnon-ope群に比べ下顎のより前方への変化が大きいことが示唆された. (2) 便宜的に設定したxy座標図上でope群のGnはnon-ope群と比べX軸座標値がプラスサイド方向 (前方) に変化する傾向を示した. (3) GnのX軸に対する変化量と初診時の下顎骨体長/下顎枝高 (Po9'-Go/Cd-Go) の比の間で有意の相関がみられた・以上のことから, 初診時における下顎枝高と下顎体長の比およびRU時までにおける下顎の変化が外科矯正治療移行への判定の指針となることが示唆された.

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