昭和歯学会雑誌
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40mW GaAlAs半導体レーザーによる歯頚部象牙質知覚過敏症の疹痛緩和に関する臨床的研究
若林 始立花 均松本 光吉
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1992 年 12 巻 1 号 p. 10-16

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抄録

従来より広く使用されている30mWのものよりも高出力の40mWGaAlAs半導体レーザーを用い, その歯頚部象牙質知覚過敏症に対する柊痛緩和効果を, 電気的に厳格な二重盲検法を用いて調査した・被験歯として18歳から81歳の患者の中から, 歯頚部象牙質知覚過敏症を有する60症例 (前歯31本, 小臼歯26本, 大臼歯3本) を用いた.レーザー装置は波長830nm, 連続波, 出力40mWのGaAlAs半導体レーザーを使用し, 厳格な二重盲検法を実施するために乱数表に基づくレーザー発振規制機構を併用した.知覚過敏度の判定基準は, 気銃によって生じた誘発痛が耐え難いほど強い場合を3度, 耐えられる痛みの場合を2度, 軽い痛みの場合を1度, 痛みとして感じられない場合を0度とした.この判定基準に基づきレーザー照射前, 直後, そして術後1週間, 1か月後の診査を行った.レーザー照射部位は歯頚部象牙質知覚過敏部とし, 可及的に近接して照射した.照射時間は30秒間を1クールとして最高180秒間で中止した.その結果, レーザー照射群の1度の症例では23例中22例が有効であり, 照射時間の平均は36.8秒であった.2度の症例では9例中8例が著効, 1例が有効であり, 照射時間の平均は161.3秒であった.3度の症例では33例中1例が有効であり, 照射時間は180秒であった.全体ではレーザー照射群33例中, 有効8例 (24・2%), 有効24例 (72・7%), 無効1例 (3.0%) であった.非レーザー照射群の1度の症例では17例中2例が有効であり, 平均照射時間は120秒であった.2度の症例では10例中1例が著効, 1例が有効でありそれぞれ照射時間は180秒であった.3度の症例では全て無効であった.全体では27症例中, 著効1例 (3.7%), 有効3例 (11.1%), 無効23例 (85.1%) であった.レーザー照射群と非照射群の間には, 危険率0.1%以下で統計学的に優位さが認められた.再発は1週間後に有効症例4例中2例に再発が認められ, 再照射により1か月後に改善が認められた.またレーザー照射により誘発痛の増悪や粘膜, 全身に対する副作用は観察されなかった.以上の結果より40mW GaAlAs 半導体レーザーによる歯頚部象牙質知覚過敏症の治療は, 安全かつ有効な手段であることが判明した.

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