昭和歯学会雑誌
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金属アレルギーの疫学的調査
本学学生を対象としたパッチテストについて
割田 研司古谷 彰伸佐藤 真弥子川和 忠治井上 昌幸
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1992 年 12 巻 4 号 p. 319-324

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抄録

全国14大学, 研究機関が参加した文部省科学研究費補助金総合研究 (A) 「金属アレルギーの疫学的調査ならびにその口腔内使用金属との関連性について」の研究の一環として, 1989年度・1990年度の2年間にわたり, 本学学生を対象としたパッチテストによる歯科用金属に対する感作率の調査を行った・被験者は本学歯学部学生のボランティアで, 男62名, 女26名, 合計88名で・年齢は22~40歳, 平均25.4歳, パッチテストと併せて, 問診表による既往歴, 生活環境等の調査を行った・パッチテスト用金属試薬には歯科用金属に含まれる代表的な元素18種類を含むM-9シリーズを用い, パッチテスト用絆創膏を用いて, 肩甲骨と脊柱を避けた背部皮膚面に48時間貼付した・判定にはICDRG基準を用い, 貼付48時間後, 72時問後, 1間週後における判定結果から, 金属による感作の有無を判定した.パッチテスト陽性で金属に対する感作有りと判定された者は, 男10名, 女6名, 合計16名で, 陽性者率は男16.1%, 女23.1%, 平均18.2%であり, 女性でやや高率であった・金属元素別陽性者数はSn, Hgで4名, Cr, Niが3名, Znで2名, Pd, Co, Sb, Moで各1名であった.また, 複数の金属に対して感作している者が3名いた.金属に対する感作有りと判定された被験者のうち, 金属による接触皮膚炎既往者群の陽性者率は33%であり・健常者における陽性者率16%に比べて高率であった.しかし, 今回の調査で, 健常被験者の約16%に, 金属による感作と考えられるパッチテスト陽性反応がみられたことから, 歯科用金属に対する潜在的な金属アレルギー陽性者がかなりの数いることが推察された.

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