昭和歯学会雑誌
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特殊脱灰法によるヒト乳臼歯咬頭部エナメル小柱の断面形態についての組織学的研究
千原 賢士
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1996 年 16 巻 2 号 p. 59-70

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抄録

ヒト乳臼歯を用いてエナメル小柱断面 (横断面ないし横斜断面) の形態分類を行った.試料は, 特殊脱灰法 (乳酸脱灰セロイジン二重包埋法) により薄切切片を作製し, ヘマトキシリン・エオジン染色を施した後, 光学顕微鏡により検索を行った.観察部位は, 乳臼歯の咬頭部を歯の長軸に対して水平に薄切し, 咬頭部エナメル質の表層部, 中層部, 深層部および小窩裂溝直下の4部位についてエナメル小柱断面の形態を観察した.エナメル小柱束の配列形態は, 石垣状構造, 魚鱗状構造, 柱状構造, 多角形集合状構造に分類された.このうち魚鱗状構造が最も多く発現し, 多角形集合状構造の発現は比較的少なかった.また, エナメル小柱個々の横断面ないし横斜断面の形状は, 鍵穴状 (A型, B型, C型), 扇状および菱形状, アーケード状, 馬蹄形状, オタマジャクシ状, 六角形状および五角形状, 円形状および楕円形状, 尖頭状, 陥凹状 (A型, B型, C型), 四角形状, 梯形状, 棒状, スペード形状の13形態で, 20形状に区別することができた.乳歯エナメル質の染色性を観察すると, 最表層部はヘマトキシリンに濃染し, 中層部は淡染する.そして, 深層部はヘマトキシリンに良染される.また, 出産直後の新産線も色素に良染される.そして, エナメル小柱頭部は小柱鞘がヘマトキシリンに良染し, 小柱頭部の中心部 (芯) は不染性のものが多くみられたが, 一部では逆に小柱鞘が不染性で中心部が良染するものがみられる.小柱尾部はヘマトキシリンに全て濃染された.

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