人工歯選択の一つの目安として, 顔面形態と上顎中切歯形態についての研究が行われており, 従来より多数の報告がある.そして, 顔面形態と上顎中切歯形態間に類似性があると, 報告されている.著者らも70%を越える類似性があると報告した.今回, 著者らは, 永久歯歯列より得た上顎中切歯の輪郭と現在使用されている人工歯の輪郭との類似性について検討した.
資料は, フィリピン人成人男性と女性の口腔内石膏模型より得た上顎中切歯輪郭を使用した.人工歯はLivdent (尖形, 方形, 卵円形, 方尖形, 方卵円形, 尖卵円形, 短方形, V型尖形, V型方尖形), Trubyte Bioblend (Square, Square Tapering, Square Ovoid, Tapering, Tapering Ovoid, Ovoid, Square Tapering Ovoid), Real Crown (混合型 (C), 卵円型 (0), 方型 (S), 短方型 (SS), 尖型 (T)) の3製品を使用した.上顎中切歯輪郭と人工歯の類似の基準は, フーリエ級数より算出した差分の値が0.3以下の場合とした.
各人工歯の分類型で分類した場合, 頻度が最も高かったのは, Livdentでは, 男女性とも右側は方尖形, 左側では, 尖形であった.Trubyte Bioblendでは, 男性右側ではSquare, 左側では, Square Tapering, 女性で左右側とも, Square Ovoidであった.Real Crownでは, 男女性, 左右側ともCであった.
人工歯と天然歯間の類似度の高かった形態について検討したところ, Livdentでは, 男女性とも右側では方尖形, 男女性とも左側では尖形であった.Trubyte Bioblendでは, 男性右側はSquare, 左側はSquare Tapering, 女性は左右側ともSquare Ovoidであった.Real Crownでは, 男性右側はT, 左側はC, 女性左右側ともCであった.また, 各人工歯間の類似度を見ると, Trubyte Bioblend 7分類型に対して, Real Crownは右側は3分類型, 左側は2分類型が対応し, Livdent 9分類型に対して, Real Crownは左右側とも3分類型が対応していた.これらのことから, 各製品により, 名称が同じあるいは類似していても, 形態には差があり, 一方, まったく, 異なる分類の名称でも, 類似した形態のものがあると考えられた.
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