昭和歯学会雑誌
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摂食・嚥下障害の診断と治療に関する研究
道脇 幸博高橋 浩二山下 夕香里横山 美加平野 薫衣松 令恵難波 亜紀子小澤 素子高橋 奈里服部 俊彰森脇 計裕道 健一
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2001 年 21 巻 1 号 p. 133-138

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抄録

高齢社会の進行により摂食・嚥下障害を呈する患者は急速に増加している.しかし摂食・嚥下障害に対する取り組みは不十分で, 現状では患者の生活の質 (QOL) は低く, 早急な対策が必要である.そこで診断法と治療法, 介護システムの開発や体系化に取り組んでいるので, その概要を報告する.摂食・嚥下障害患者の多くが在宅や老人ホームなど, いわば病院以外の施設で介護を受けていること, 不顕性誤嚥も多いことから, 簡便でどこででもできるスクリーニング検査法が必要であるが, 現状では信頼性の高いスクリーニング検査法は確立していない.そこで, 症候学的研究や呼気音の聴覚的な印象を基にスクリーニング検査法を開発している.精密検査法については, 従来定性的な分析に使用されてきたX線ビデオ透視検査法 (以下VF検査法) を使って, 時間軸上で解析する方法を検討し, さらに喉頭蓋の形態や運動性と咽・喉頭部への残留と嚥下障害が関連していることを明らかにした.また呼気音の音響学的診断法や近赤外線を応用することでX線透視検査に代る精密検査法の開発を行っている.治療や訓練法については, 効率的な摂食・嚥下訓練のために簡易型検査法の開発と訓練法の体系化を行い, 患者に応じた対応ができるようにした.また舌背および舌根の挙上, 喉頭挙上, 喉頭部の閉鎖を改善することを目的として新たな嚥下法を開発し, 臨床的に適応している.さらに摂食・嚥下障害を呈する患者のQOLの向上のために, 「安全な経口摂取」の観点から食物の物性や素材と嚥下障害との関連を検討し, すでに食物の物性が嚥下障害に影響を与えることを明らかにしている.今後の課題として, 診断法については, 病院以外の施設での嚥下機能検査や頻回の検査を可能をするためにX線ビデオ透視検査に代る誤嚥診断法の開発が必要であり, 治療・訓練法については, 治療法の開発とともに体系化が必要である.また患者のQOLの向上のためには, 代替栄養法の適応および代替栄養法と経口摂取の併用に関する研究も必要であると考えている.

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