2003 年 23 巻 4 号 p. 264-268
より良い歯科医療を行うためには, 歯科医師は患者と良好にコミュニケーションを取り, 相手の気持ちを理解することが重要である.しかし, コミュニケーションがうまくとれない歯科医師が増え, 社会的な問題になっていることも事実である.この問題を改善するための2年生の科目「高齢者の福祉と口腔の健康」のうち, 患者付き添い実習を高齢者歯科学教室が中心となって担当し, その自己点検・評価を行った.実習は外来待合室で, 学生が1名ずつ直接患者に実習趣旨を説明し, 同意を得た後に様々な会話を行ってコミュニケーションをとる方法を用いた.この実習の目的のうち, 「患者の気持ちを考えながらコミュニケーションをとることが出来た」という項目は良好な結果が得られた.しかし「口腔疾患に悩む患者の日常生活や悩みを理解した」や「三次医療機関としての歯科病院の病院機能を理解できた」は評価が低かった.実習の意義については, 「患者付き添い実習は必要である」が91%を占め, 必要でないと答えた学生は1名もいなかった.以上の結果から, 患者付き添い実習は学生にとって非常に有意義であったが, 実習時間の格差などの問題点も判明した.さらに実習を充実させるために, これらの改善や自己点検・評価を継続して行う必要性が示唆された.