昭和歯学会雑誌
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Aclinobacillus aclinomycelemcomilansの細胞致死膨化毒素の毒性に関する基礎研究
森崎 弘史五十嵐 武
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2004 年 24 巻 3 号 p. 255-260

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抄録

Actinobacillus aclinomycetemcomitansが産生する細胞致死膨化毒素 (Cytolethal Distending Toxin : CDT) は, 哺乳動物細胞の増殖を阻害し, 細胞膨化と細胞死を引き起こすタンパク毒素である.本研究では組換え大腸菌で産生した、A.aclinomycetezcomitansのCDTを用いて, ヒト培養細胞 (HeLa細胞およびヒト胎児肺線維芽細胞TIG-7) のCDT感受性を, 細胞形態および細胞数の変化から評価した.CDT処理の細胞形態への影響を調べたところ, HeLa細胞は処理2日目で丸みを帯び, 処理4日目で大きさが約5倍以上に膨化していた.これに対して, TIG-7細胞では処理2日目では形態変化が観察されず, 処理4日目でも若干の膨化を示すにすぎなかった.しかし, どちらの細胞もCDT処理後, 増殖停止が観察された.次に, CDTの処理濃度を変化させて細胞数の変化を調べたところ処理濃度の違いによる目立った変化は認められなかった.しかし, CDT処理後の生存率はHeLa細胞とTIG-7細胞で大きく異なり, 処理7日目の生存率はHeLa細胞で5%以下, TIG-7細胞で約20%を示した.加えて, 生存したTIG-7細胞は, その後の継代で増殖はしないが死滅することなく生存し続けた.これらの結果は, A.actinomycetemcomitans のCDTは宿主細胞に対して細胞膨化と長期間の細胞増殖停止を誘導することで, 感染促進因子としても働く可能性を示唆した.

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