昭和歯学会雑誌
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青斑核から脊髄後角への痺痛抑制性下行性投射に関する電気生理学的検討
前田 昌子鶴岡 正吉井上 富雄
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2006 年 26 巻 2 号 p. 141-151

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抄録

青斑核からの下行性ニューロンの活動は三叉神経脊髄路核および脊髄後角で痛覚信号を抑制する.青斑核からの下行性投射は両側性である.最近, 反対側の脊髄後角に投射する新たな青斑核ニューロンの存在が示唆されている.本研究の目的は, 青斑核からの新たな下行性投射の存在を確認することと, このニューロンの軸索が脊髄内を下行する経路を明らかにすることである.ペントバルビタールで麻酔し, 人工呼吸下で管理されたラットの脊髄後角から単一ニューロンの応答をガラス管微小電極法により細胞外記録した.抑制効果は受容野に与えた熱侵害刺激に対するニューロン応答の減少により評価した.ニューロン記録部位と反対側の青斑核に電気的に刺激 (100Hz, 100μA, 0.1ms矩形波) を加えるか, あるいはニューロンの細胞体を活性化するグルタミン酸 (50nM, 1μ1, pH6.8) を注入すると, 後角ニューロンの熱受容応答に対する抑制は依然として観察された.この抑制効果は青斑核の破壊で消失した.また, ニューロン記録部位と反対側の脊髄後角にヨヒンビン (α2受容体拮抗薬, 1.0mM) を投与してノルアドレナリン伝達を阻止したときも, 後角ニューロンの熱受容応答に対する抑制効果はみられた.ニューロン記録部位と反対側の後外側索の切断は, 後角ニューロンの熱受容応答に対する抑制効果に影響を与えなかった.一方, 前外側索の切断および前外側索への塩酸リドカイン (4%, 1μ1) 注入による可逆的伝導ブロックにより, 青斑核刺激による抑制効果は消失し, 60分後に回復した.これらの結果は, 青斑核からの軸索が同側の脊髄前外側索を下行し, 脊髄内で正中線を横切って反対側へ投射する青斑核ニューロンの存在を示唆している.

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