昭和歯学会雑誌
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歯周組織の振動感覚による診査法の試み
上下顎前歯部について
堀内 茂貴堀内 伸一新谷 明幸古屋 良一松井 洋一郎川和 忠治
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1988 年 8 巻 1 号 p. 99-104

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抄録

従来より歯周組織の健康状態はおもにピンセットなどを用いた歯牙の動揺度・レントゲンによる歯槽骨の吸収量・歯周組織の炎症の有無および程度・ポケットの深さなどによって判定されているが, これらの判定は客観性に乏しいと考えられる.近年, 客観的な判定方法も報告されてはいるが装置, 測定方法等の問題により実用には至っていないのが現状である.本研究は歯周組織の客観的な判定法としてその振動感覚の応用を試みたものである.すなわち, 上下顎の前歯にオージオメータと加振器を応用して種々の周波数の振動を加え, 各周波数における振動感覚の損失する振動の強さ (振動感覚損失値) が最小となる周波数 (ピーク周波数) を測定した.その結果, 1) 正常な歯周組織を有する歯牙のピーク周波数は3, 2, 1, 3, 1, 2の順に低下した.2) ピーク周波数は動揺度の増加により有意に低下した.3) ピーク周波数は歯槽骨吸収度およびポケットの深さと強い負の相関がみられた.4) ピーク周波数を測定することにより歯周組織の状態を客観的に判定しうる可能性が示唆された.

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