日本皮膚科学会雑誌
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抗セントロメア抗体の免疫グロブリンクラス別力価及び補体結合能の疾患別相違について
佐藤 伸一竹原 和彦石橋 康正
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1991 年 101 巻 2 号 p. 97-

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抄録

抗セントロメア抗体(anticentromere antibody,以下ACA)陽性29例を,①全身性強皮症(systemic sclerosis,以下SS)或いはレイノー現象のみを有する患者(SS/Ray群)16例,②SS以外の膠原病(CTD群)7例,③上記①②に属さないその他(Other群)6例に分類した.各群について,免疫グロブリンクラス別ACA力価,C3及びproperdin結合性ACA力価を間接蛍光抗体法にて測定した.また,補体活性化能の指標としてC3-fixing ACA(C3-FACA)/IgG ACA及びproperdin-fixing ACA(properdin-FACA)/IgG ACAを用いた.以上の点から,ACAの諸性質の相違を各群間で検討した.SS/Ray群の全免疫グロブリンは全例1,024倍以上の高力価を示したが,properdin結合性ACAは全例256倍以下の低力価であった.これとは対照的に,他の2群の全免疫グロブリン力価には大きなばらつきが認められ,CTD群及びOther群では13例中4例で512倍以下であった.C3-FACA/IgG ACAでは,Other群がSS/Ray群より有意に高値を示し,properdin-FACA/IgG ACAではCTD群及びOther群はSS/Ray群に比べて有意に高値であった.また,IgM型ACAについては,SS/Ray群により高頻度に陽性となる傾向が認められた.以上より,全免疫グロブリンで低力価を呈するか,或いはproperdin結合性ACAで高力価を呈する例は62%の感受性,100%の特異性をもって,SSの疾患スペクトラムに属さないこと,また,CTD群,特にOther群ではACAの補体活性化能が高いことが示唆され,ACAの出現機構はいまだ解明されてはいないが,SS/Ray群とそれ以外で認められるACAは異なる性質を有することが示唆された.

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© 1991 日本皮膚科学会
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