後天性真皮メラノサイトーシスの病態と名称の推移について概説した.顔面型では,肝斑様の病態を伴っていることが多く,色素斑を改善させるにはQスイッチレーザーによる治療が必要であるが,炎症後色素沈着の発生頻度が高く,患者にあらかじめ十分説明したうえで,対処できることが求められる.四肢型では色調が褐色調を呈する場合,生検などにより診断を確定する.
整容的な観点などからイボ,ホクロ病変のレーザー治療を希望する患者には,炭酸ガスレーザーやEr:YAGレーザー機器による蒸散治療が可能である.近年では美容関連の5学会による美容医療診療指針が作成され,治療方針の決定,患者同意,リスク回避などの面から本邦の美容医療の質の向上に寄与することが期待されている1,2).レーザー治療の有用性,安全性は高いが,機器の取り扱いや操作に習熟する必要があり,熱傷,色素沈着,瘢痕形成などの予防策にも注意が必要である.また,イボ,ホクロ病変には皮膚悪性腫瘍が含まれている可能性があり,照射前には慎重な診断を心がける必要がある.
最近,非侵襲性施術において注入治療はダウンタイムが少なく効果がわかりやすいという点で急速に普及している.一般的に,表情筋の収縮による動的なシワに対してボツリヌス毒素,骨の萎縮や皮下組織のボリュームロスなどによる静止時のシワ,形状の補正に対して皮膚充填剤を用いる.
2022年美容医療診療指針(令和3年度改訂版)に追加された,ヒアルロン酸製材単体治療,ボツリヌス毒素製剤とヒアルロン酸製材の併用療法における顔のシワ・たるみに対する有効性および合併症について正しく理解する.
老化が病と考えるアンチエイジング医学は,老化速度をepigenetic Clockなどの老化時計で計測し治療を目指している.暦時計以外に生物学的老化が計測できる様になった.見た目の領域は,老化計測の表現型としてあるだけでなく,見た目から健康への働きもあることから美容領域と強くつながっている.アンチエイジング医学は,長寿科学の一部で,腸脳皮膚相関も含めた全身への対応を指導することで,健康寿命の延伸を目指す.運動・栄養・精神(脳・睡眠)・環境への予防的取り組みだけでなく治療介入も目標とされる.リプログラミングを用いて“若返り”を研究する領域も含んでいる.
70歳男性.潰瘍性大腸炎あり.3年前より流涙と皮膚のびらんが出現.治療に難渋するため当科紹介.四肢,体幹に色素沈着とびらんが散在し,臍窩には浸軟した隆起性局面,眼瞼結膜にびらん,口腔内に敷石状病変を認めた.病理組織像は表皮の不規則な肥厚と,表皮直下の浮腫,好酸球と好中球の稠密な浸潤.前医の生検組織では蛍光抗体直接法で表皮基底膜へのIgG,C3の沈着と,表皮細胞間にIgAの沈着を認めたが,当科の生検組織では陰性.ジアフェニルスルホン内服が奏効した.血清学的な解析を交え,他疾患との鑑別についても考察した.
日本人女性258例の両上肢,胸腹部の径0.5 mm未満の微小なcherry hemangioma(CH)と容易に視認できる径0.5 mm以上の通常のCHの数的経年変化を調査した.微小なCHは10代後半から認められ,60歳以上では77例中60例(77.9%)に存在した.通常のCHは20代後半から認められ,60歳以上では77例中56例(72.7%)に存在し,微小なCHとしばしば共存していた.微小なCHが10歳代から出現することを認識していることは,微細な血管病変を伴う他疾患との鑑別に役立つ.
Onychomatricoma(以下,OM)は手指・足趾の爪母に発症する原因不明の上皮線維性の稀な良性腫瘍である.爪母における発症部位によりOM-type1とOM-type2の2型に分類される.爪甲先端部分のダーモスコピーは,OM-type1では,境界明瞭な管腔が横並びに多数開口するのに対し,OM-type2では,境界不明瞭な管状構造を形成し蜂巣状や渦巻状を呈する.ダーモスコピーにより2型を術前に鑑別することで,爪母の切除範囲や術後の爪甲の再生の程度が予測可能と考えられる.