1994 年 104 巻 6 号 p. 799-
31歳,女.第2子出産後(30歳時),顔面より紅斑が出現し,全身に拡大する.初診時,間擦部に湿潤性湿疹病変を認め,細菌感染症を伴ったアトピー性皮膚炎と診断し,セフェム系抗生剤内服,ステロイド外用にて軽快.1ヵ月後,間擦部を中心として点状びらん,痂皮を伴う湿潤局面が多発し,鼻腔,皮膚より,exfoliative toxin(ET)産生性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が分離された.塩酸ミノサイクリン内服に反応せず,軽快,増悪を繰り返す.MRSAが消失し,メチシリン感性黄色ブドウ球菌(MSSA)となるにつれて皮膚症状は軽快し,このMSSAはETを産生していなかった.自験例においてはMRSAによる二次感染に加えて,局所で産生されたETがアトピー性皮膚炎の悪化因子として作用していたと推測された.