日本皮膚科学会雑誌
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ランゲルハンス細胞
鳥居 秀嗣
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1998 年 108 巻 14 号 p. 1939-

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抄録

ランゲルハンス細胞は表皮に存在する抗原提示細胞で,形態学的には樹状を呈している.この細胞は骨髄幹細胞から分化して表皮に至り,まずは表皮における監視役としての働きをする.そして何らかの抗原刺激を受けた後は,表皮より遊走を始め,最終的に局所のリンパ節に至り,T細胞に対して抗原提示を行う.この非常に動的な細胞の起源,分化,遊走及びその機能制御などについて最近急速に解析が進んでいる.ランゲルハンス細胞の前駆細胞はCD34陽性細胞であり,GM-CSF,TNF-αやTGF-β1他の影響を受けてCD1a陽性でバーベック顆粒を有するランゲルハンス細胞へと分化する.そしてその表皮からの遊走に関しては,TNF-αやIL-1βが重要であることが明かにされてきている.さらに最近,ランゲルハンス細胞が解剖学的に神経末端と近い関係にあり,さらに神経末端から放出される神経ペプチドがランゲルハンス細胞の機能制御に関与していることが報告されたが,この機能制御にはIL-10をはじめとしたサイトカインがその仲介として働いていることが判明した.又同時に,ランゲルハンス細胞からはIL-6他の複数の神経栄養因子が産生されており,これによりランゲルハンス細胞は神経に対して何らかの働きかけをしているものと推定された.最後にランゲルハンス細胞の機能解析の有効な手段として,この細胞の株化の試みが盛んに行われているが,最近新生児マウス表皮より形態的及び機能的にランゲルハンス細胞類似の細胞株が確立され,ランゲルハンス細胞研究に非常に有用なモデルと期待されている.

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© 1998 日本皮膚科学会
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