日本皮膚科学会雑誌
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生涯教育講座
急性刺激性接触皮膚炎から化学熱傷まで
戸倉 新樹森 智子
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2003 年 113 巻 14 号 p. 2025-2031

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抄録

一次刺激性接触皮膚炎の極型である急性刺激性接触皮膚炎は,接触原である化学物質の種類により特徴ある臨床像を呈する.またその発症機序も個々の化学物質によって異なる.この急性刺激性接触皮膚炎と化学熱傷の間に境界線を引くことは困難であり,同列に論じられる必要がある.化学熱傷は酸・アルカリによる皮膚傷害に対して使われてきた呼称であるが,実際にはその他の機序によっても皮膚炎が誘導される.フッ化水素はその代表的なものであり,速やかに驚くほど深部まで壊死を起こす.酸としてよりも,強力な組織傷害性をもつフッ素イオンの発生により組織を破壊する.セメントは機械的傷害や六価クロムによるアレルギー性接触皮膚炎を起こすが,慢性の接触刺激では活性酸素の関与も示唆されている.しかし水酸化カルシウムの強アルカリによる腐食作用が最も強い傷害で,セメント熱傷と呼ばれている.灯油皮膚炎は灯油による角化細胞の破壊によるが,サイトカインの関与も考えられている.過酸化水素の接触によって生じる皮内での酸素発生による水疱形成のように特殊なものもある.

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