日本皮膚科学会雑誌
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原著
脂腺母斑の臨床病理学的検討 第2報 2次性腫瘍について
安齋 眞一福本 隆也木村 鉄宣
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2007 年 117 巻 14 号 p. 2479-2487

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抄録
脂腺母斑243例を用いて,2次性腫瘍の合併の有無について検討を行った.2次性腫瘍は,最年少10歳から,33例(13.6%)に合併していた.合併腫瘍は良性腫瘍が33病変,悪性腫瘍が10病変の合計43病変であり,2次性腫瘍をともなった症例では,1症例あたり1.3個の病変を合併していた.年齢的には,思春期以降に急速に合併が増加し,50歳以上では,21例中11例(52.4%)で2次性腫瘍を合併していた.悪性腫瘍は,30歳以降の例でのみ観察された.2次性腫瘍の合併は,顔面が最も頻度が高かった.2次性腫瘍を合併している例では,そうではない例よりも統計学的に有意に独立脂腺を多く合併していた.合併した2次性腫瘍は,良性のものとしては毛芽腫が最多で16病変,続いて脂腺腫10病変,乳頭状汗管囊胞腺腫6病変,汗管腫1病変であった.一方悪性腫瘍は,基底細胞癌が最多で6病変,ついでアポクリン腺癌2病変,有棘細胞癌と脂腺癌がそれぞれ1病変ずつであった.現在まで報告されている脂腺母斑と2次性腫瘍の関連に関する報告と比較して,今回のデータは欧米の報告よりも合併率は低く,本邦の他の報告とほぼ同様であった.以上のことから,脂腺母斑においては,思春期までの患者では,美容的な観点から手術適応を決定し,30歳を超えた場合には,加齢による悪性腫瘍を含めた2次性腫瘍の合併の頻度を考慮に入れて手術適応を決定するべきと考える.
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© 2007 日本皮膚科学会
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