日本皮膚科学会雑誌
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原著
Skindex-16/GHQ-28を用いた乾癬患者に対するQOL評価と治療満足度調査
大久保 ゆかり荒井 佳恵藤原 尚子天谷 美里坪井 良治
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2007 年 117 巻 14 号 p. 2495-2505

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抄録

【目的】乾癬患者のquality of life(QOL)低下に及ぼす諸因子と治療に対する満足度を把握するためにアンケート調査を実施した.【方法】東京医科大学病院皮膚科に通院する乾癬患者143例に対して,皮膚疾患特異的なQOLの指標であるSkindex-16日本語版と精神健康度を評価するGHQ-28日本語版により調査した.更にVisual analogue scale(VAS)により瘙痒,爪症状,関節症状,外用薬を塗布することに対するストレスを評価し,さらに外用薬塗布に要する時間,治療満足度をアンケートとして実施した.【結果】Skindex-16のスコア(平均値±SD)は,総合:42.4±21.7,症状:26.3±22.3,感情:61.2±26.2,機能:29.0±27.3と感情面のQOLが最も低下していた.GHQ-28のスコアは6.12点±5.96(GHQ採点法)となり,ハイリスク症例は55例(39.3%)であった.Skindex-16とpsoriasis area and severity index(PASI)スコアは有意に正の相関を示したが(r=0.381,p<0.01),GHQ-28とPASIスコアの相関は低かった.PASIスコア10以下の患者であってもSkindex-16,GHQ-28が高値を示し,QOLが低下している患者が多く存在した.外用薬塗布時間が10分以上になると,塗布することに対するストレス(VASスコア)は有意に高値を示した.また,現在の治療に対して約半数の患者は何らかの不満を持っていることが判明した.【結語】PASIスコア10以下の患者でもQOLや精神健康度が低下している乾癬患者が多く存在した.日常診療においては,現在の治療満足度や日常生活への支障の程度,精神的健康度,治療の負担などを具体的に患者に質問し,患者の立場に立って治療に取り組むことが重要である.

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© 2007 日本皮膚科学会
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