日本皮膚科学会雑誌
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皮膚のカテプシン酵素力に就て
三宅 俊弘
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1958 年 68 巻 4 号 p. 221-

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抄録

動物の死後種々の臓器に起る自家融解については古くから興味がもたれ,且つ色々臆測されて来ていたが1890年Salkowskiが一種の蛋白分解酵素がこれに関与することを始めて指摘し,Vernon(1908)はこれらの酵素について詳細な研究を行つて肝,腎,脾に特に大量含有されていることを報告した.Hedin(1904)は脾臓から2種類の酵素を分離し,1つはpH4附近で線維素に最もよく作用し,他の1つはpH7~8で最もよく作用することを発見した.1928年Willstatter u. Bamannはこれらの酵素を動物の細胞内酵素としてカテプシン(Cathepsin)(以下「C」と略記)と名づけた.その後Waldschmidt-Leitzとその協同研究者によつて詳細に研究され,「C」はチスチンおよびSH基によつてPapain同様活性化されることを発見し,組織滲出液中にも存在し,合成ペプチードにも作用する一定のPepitidaseの性状をも持つていることが明らかにされ,蛋白分解酵素に加えてCatheptic carboxypeptidase,Aminopeptidase,Dipeptidaseの性状をも有することがわかつた.Fruton,Bergmannとその協同研究者等は合成品を基質に用いることによつて「C」を詳細に分類し,且つその特性についても合せて記述し,「C」の研究に非常な進歩をもたらした.その詳細は第1表に示す如くである.「C」Ⅰの特異性はPepsinの特異性と一致し,その至適pHは5.6である.「C」ⅡおよびⅤはEndopeptidasesで「C」ⅡはTrypsinと同様な特異性をもつている.「C」ⅤはChymotrypsinに対する基質にも若干作用する.「C」Ⅳは一種のCarboxypeptidaseで膵臓のCarboxypeptidaseと同様な特異性を持つている.「C」ⅢはAminopeptidaseの作用を有し,組織中の金属によつて活性化されるLeucine aminopeptidaseの特異性を若干有している.「C」の自然のまゝの性状は餘り詳細には研究されていないが,Benzoylcinamide,Carbobenzoxyl-L-isoglutamine,Carbobenzoxyl-L-serinamide等に作用する数種のEndopeptidaseが存在し,Fruton & Bergmannは牛の脾臓中にチスチンによつて活性化される酵素で,L-alanylglycylglycine,Glycylglycine,L-glutamyl-L-tyrosine等の遊離ペプチードを水解する酵素を発見している.Irving,Fruton and Bergmannは「C」Ⅱの活性化はPapainのそれと近似性を持ち,2つの非活性の状態で存在し得るものらしく,α-ProteinaseはCyanideによつて活性化されないが,痕跡のSH基の存在下に可逆性にβ-Proteinaseに移行し得るといつている.「C」Ⅱ,Ⅲ,Ⅳはチステイン濃度を殆ど変化しない状態で酸素を除去すると嫌気性の蛋白分解能を増加させ得るといつている.

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© 1958 日本皮膚科学会
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