日本皮膚科学会雑誌
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色素性蕁麻疹について 各病型,全身性変化並びに肥胖細胞と本症の臨床症状との関係について
西脇 宗一
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1962 年 72 巻 10 号 p. 780-

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抄録

本疾患は1869年Nettleshipによつて最初に“褐色斑を残す慢性蕁麻疹”chronic urticaria leaving brown stainsとして記載された.その後1975年Tilbury Foxは本症の皮疹が黄色腫に類似するものがある点からXan_thelasmoideaと命名したが,現在では1878年Sangsterが命名したUrticaria pigmentosaの名称が広く使用されている.また本症の組織学的特徴として,真皮内に肥胖細胞の増加がみられることは1887年Unnaによつて指摘された.本症の多くは出生時すでに存在し,あるいは生後まもなく発症するが,思春期以後に発症するものもある.Raymondはその皮疹の形状から臨床的に1.斑紋型(Cavafy型),2.結節型(Tilbury Fox型),3.混合型(Raymond型)に分けている(Torok).また組織学的な見地から,成人にみられる晩発性の皮疹では,幼児のそれに比して肥胖細胞が乏しい点から,両者を厳格に区別すべきであるというBlumerの見解にもとづき,Torokは,1.肥胖細胞腫をもつ色素性蕁麻疹(Unnna型)2.肥胖細胞が散在する色素性蕁麻疹(Jadassohn-Rona型)の二種に大別している.また,発症年令によって臨床症状,組織所見に多少の相違がある点から,幼児型と成人型に大別することもあるが,これはBlumerの見解にもとづく前記の分類とほぼ同様の意味に使用されている.さらに組織学的な肥胖細胞増加の程度と発症年令を組合わせて第1表の如く分類するものもある.本邦における本症症例は,遠山の報告を嚆矢として,池田,守山などの論文があり,本邦における各病型の数的関係は,昭和17年までの森山の統計にその後昭和36年までの記載の明らかな報告例並びに著者の症例を追加すれば第1表の如くであり,ほゞ欧米のそれと一致する.従来,やゝもすれば色素性蕁麻疹は皮膚のみに限られた疾患と考えられがちであつた.即ち僅かにLittle(1905),Gray(1938)及びBertelotti(1943)らがリンパ腺,骨髄の変化について報じた程度であつた.ところが1949年Ellisが色素性蕁麻疹に罹患していた1才の女児の剖検例について検索を行い,皮膚以外

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