デサントスポーツ科学
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研究論文
コリジョンスポーツにおける至適な頸部周囲筋力と頸椎アライメントの解明:重症頭頸部外傷を予防するために
田島 卓也山口 奈美黒木 修司森田 雄大帖佐 悦男
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2020 年 41 巻 p. 135-144

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抄録

コリジョンスポーツ選手においては頸椎の退行変性をきたすことがあり,変性が進行すると頚髄損傷などの重大事故につながる危険性も示唆されている.頸椎退行変性とくにアライメント異常には頸部周囲筋力バランスが関与していることも報告されている.コリジョンスポーツ選手の頸椎退行変性予防さらには重症頸椎頚髄損傷予防を目的とし,頸部屈曲・伸展筋力バランスの異常が頸椎退行変性やアライメント異常に関与していると仮説のもと柔道選手及びラグビー選手の頸部周囲筋力と頸椎レントゲンの関連を解析した.対象はメディカルチェック時に頸部周囲筋力測定を実施した柔道選手168名 (22-32歳),ラグビー選手203名 (18-30歳) であり,このうち頸椎レントゲン検査を受けたのは柔道群55名,ラグビー群58名であった.身長・体重・頸部屈曲筋力・伸展筋力および屈曲/伸展筋力比とも柔道群が有意に大きかったが,体重比は両群間に有意差はなかった.頸椎アライメントにおいては正常群と前弯消失群,後弯変形群の筋力測定値に関連は認めなかったが柔道群においてS状変形群の伸展筋力が有意に大きかった (正常群:331.7±48.4N,S状変形群:420±50.2N.p<0.05).屈曲/伸展筋力比では柔道群の前弯消失群 (0.67),後弯変形群 (0.63),およびラグビー群の椎間腔狭小化有り群 (0.54) において正常群 (柔道:0.78, ラグビー:0.68) と比較し有意に低下していた (p<0.05).屈曲/伸展筋力比ひいては相対的な屈曲筋力の低下が柔道におけるアライメント異常およびラグビーにおける椎間腔狭小化に関与している可能性が示唆された.

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